丸亀製麺で「青い制服」を発見したら、お店に来て大正解なワケ
全国に850店以上を展開する、うどんチェーンの丸亀製麺。厨房で他の店員さんとは違った制服の人を見かけたことはないだろうか? 全国に約1700人いる「青い制服の人」の秘密を解き明かそう。(イトモス研究所所長 小倉健一) 【画像】丸亀製麺で見かける「青い制服の人」 ● 丸亀製麺の「非合理的」戦略 丸亀製麺は讃岐うどん専門店として「手づくり」「できたて」を追求するブランドである。合理的な戦略と非合理的な店舗づくりが見事に組み合わさって、同チェーンの成長を支えている。 ビジネスの成功には理屈や合理性だけでは説明できない要素が数多く含まれる。ビジネスは人間の活動であり、合理的な判断やデータに基づく意思決定が重要視される一方で、感情や文化、信念が大きく影響を及ぼす場面も多い。 例えば、ある企業が新製品を開発する際、理論的には市場調査を行い、需要があると判断される商品を提供するべきである。 しかし、時に市場調査の結果が芳しくなくても、創業者やリーダーの直感に基づいて開発された商品が大成功を収めるケースがある。スティーブ・ジョブズが率いたアップルのiPhoneの開発はその典型例だ。 当時の携帯電話市場は既存の機能を拡充する方向性が主流であったが、ジョブズはアプリケーションを中心に据えた全く新しい製品を提案した。市場調査のデータからは必ずしも支持されなかったようだが、結果的に市場を一変させる大きなイノベーションとなった。 丸亀製麺は非合理的な戦略を取り入れ、成功を収めたチェーンストアである。
● 丸亀製麺が「セントラルキッチン」を採用しないワケ 一般的なチェーンストアは、調理工程を店舗ではなく工場に集約し、効率性と品質の均一化を図る。工場で一括調理を行えば、コスト削減が可能になり、料理の品質にばらつきが生じにくくなるためである。 丸亀製麺は一般的な方法を採用せず、各店舗で調理を行う仕組みを選択している。店舗で調理を行うことで、料理の鮮度を高め、出来立ての状態で提供することが可能となる。 さらに、調理場を顧客に見せることにより、安心感や楽しさを提供する新しい価値を創造している。顧客にとって食事の提供だけでなく、調理過程そのものを体験できることが魅力として働く。こうした仕組みにより、他のチェーンストアとの差別化が実現している。 ほとんどのファミレスチェーン、飲食チェーンが採用するセントラルキッチン方式を採用する企業では、初期段階で工場建設や多店舗展開が必要となる。そのため、大規模な初期投資が不可欠だ。 一方、丸亀製麺は各店舗が独立して運営できる仕組みであり、初期投資を最小限に抑えることが可能である。海外展開においても、1店舗ごとの試験的な進出が可能となり、不確実性が高い市場でもリスクを抑えた展開ができる。 丸亀製麺の独立運営方式は、失敗時の損失を軽減する点で優れている。挑戦して失敗することが、ビジネスモデルに組み込まれているのである。 一般的なチェーンストアの効率性重視の運営方法は、柔軟性に欠けるという欠点を持つ。丸亀製麺の運営方式は、効率性を犠牲にする代わりに、顧客体験や柔軟性を重視したものである。このアプローチが競合との差別化を実現し、成功の要因となっている。 ビジネスの成功には、挑戦と失敗を繰り返す姿勢が重要だ。ユニクロを経営するファーストリテイリングの柳井正氏やソフトバンクの孫正義氏は多くの手痛い失敗を経験し、その失敗を糧に大きな成長を遂げた。 何事も実際に行動しなければ結果は分からない。丸亀製麺の戦略がその好例である。