涙の清原正吾、注目の進路は「決め切れていません」 “指名漏れ”で葛藤の日々「考えたい」
全日程終了し、父・和博氏が陣取るスタンドへ絶叫「ありがとう!」
10月に行われたプロ野球ドラフト会議で、指名から漏れた慶大・清原正吾内野手(4年)は10日、東京六大学野球秋季リーグの早大2回戦に「4番・一塁」で出場し4打数1安打。大学最終シーズンの全日程を終えたが「明日以降、自分と見つめ合って考えたいと思います」と進路表明は保留した。計り知れないポテンシャルを秘めた“ジュニア”は今、何を迷っているのだろうか──。 【実際の様子】溢れる涙をこらえ切れず…大学ラストゲームの早慶戦を終えた清原正吾 最後のシーズンを5位で終えたものの、最終週では優勝決定まで「あと1勝」としていた宿敵・早大に連勝して意地を見せ、有終の美を飾った。清原は試合後、NPB通算525本塁打を誇る父・和博氏が見守るスタンドへ向かって「ありがとう!」と絶叫し、あふれ出した涙を拭った。 記者会見では「早稲田戦で2連勝することだけを考えて毎日を過ごしてきたので、進路に関しては明日以降、自分と見つめ合って考えたいと思います」と語り、「野球をやめる選択もありうるのか?」との質問が飛ぶと、「そこも含めて、まだちゃんと腹に落として決め切れていません。(現時点では)どの選択肢もありうると言いますか、自分自身で考えて決めたいと思います」と説明した。 これまで進路をプロ1本に絞り、その他の就職活動はしていなかった。今から企業に就職して社会人野球でプレーする可能性は、極めて低い。一方、複数の国内独立リーグ球団からオファーが届いている。ドラフト会議(10月24日)での失意の指名漏れから2週間が経過したが、恩師の慶大・堀井哲也監督は「独立リーグからのオファーは伝えていますが、本人はリーグ戦に集中したいということで、これまで一切反応がありませんでした。僕も(清原が早大戦に集中できる)環境をつくろうと努めてきました」と明かした。
「幼少期に勝負とは何か、野球とは何かを生で見聞きしてきた」
特異な野球人生を歩んできた。小学生時代には軟式野球に取り組んでいたが、中学時代はバレーボール部、高校時代はアメリカンフットボール部に所属。大学進学と同時に野球を再開したが、硬球で本格的にプレーするのは初めてだった。そんなハンデを克服し、わずか4年で慶大の4番に定着。最後のシーズンだけで3本塁打を放った急成長ぶりは、前代未聞と言っていいだろう。 ただ、堀井監督は「野球から6年離れていたと言われますが、彼はその前の幼少期に、勝負とは何か、野球とは何かをナマで見聞きしている。その覚悟があっての入部でした。野球に対する基準は相当高いと思います」と指摘。“清原和博の息子”として、過度の注目や重圧にさらされてきたことも事実だが、アドバンテージも確かにあったと言えるのかもしれない。 ドラフト会議を迎えた時点での今季成績は打率.200と低迷していたが、その後の早大1回戦では、左翼席中段への3号ソロを含め4打数4安打と大爆発。これまで苦手といわれてきた内角球を、詰まりながら右前へ落とすヒットを2本放った。堀井監督は「毎カード成長してきたんですよね。毎カード、いい投手と対戦するごとに微調整していくスタンスでした」と感嘆する。 堀井監督は「野球だけを見たら、当然そうなのですが、彼は(野球以外にも)いろいろな可能性を持っている人間なのでしょうね。だからこそ答えが出ない、これからしっかり答えを出すということだと思います」と付け加えた。 これまで誰も歩んだことのない野球人生を進んできた。その実力は最高峰のプロのレベルに近づいたように見えるが、進路は自身が決断する以外にない。
宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki