共産主義時代の政治犯刑務所 忌まわしい記憶を「遺産」に ルーマニア
建物に入ると天井から、当時の被収容者の顔写真が多数つるされている。ここでは、600人以上の学生が拷問を受けた。中には、後に拷問する側に回ることを余儀なくされた人々もいた。
■ようやく世界遺産申請へ
政府はようやく重い腰を上げ、ピテシュティを含め5か所の旧刑務所について、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産登録を目指し、申請に乗り出した。
2014年にピテシュティ刑務所博物館を立ち上げたマリア・アクシンテさん(34)はその動きを歓迎しつつ、政府の対応は遅過ぎるとして、過去の問題に対する「無関心と無理解の表れ」だと批判した。
物価高騰が続くルーマニアでは、共産主義時代を懐かしむ風潮も強まりつつある。
最近の世論調査では、共産主義体制は「ルーマニアにとって良かった」とする回答が1100人のうちほぼ半数(48.1%)に上り、10年前より3ポイント増加した。
共産主義政権を率いた独裁者、故ニコラエ・チャウシェスク元大統領の誕生日を祝い続ける国民も少なからず存在する。
モイカさんは、地元の高校でルーマニアの共産主義体制について語り継いでいる。生徒から、「共産主義時代の方が暮らしは楽だったとママがよく言っていました」と聞くこともあるという。
そんな時にモイカさんは「おじいちゃんに聞いてみてごらんなさい」と答え、ジラーバの「監房の悲惨さ」について話をしている。【翻訳編集】 AFPBB News