優勝し、胴上げされる阿部慎之助監督（カメラ・相川　和寛）

　巨人が４年ぶり４８度目（１リーグ９度含む）のリーグ優勝を達成し、球団創設９０周年の節目を飾った。マジック１で迎えた広島戦に勝ち、歴史的混戦となったセ・リーグを制した。就任１年目の阿部慎之助監督（４５）は、２００２年原辰徳以来、球団６人目の新人監督Ｖ。スポーツ報知に手記を寄せ、「みんなすごいよ。できたんだよ」と涙を浮かべた。チームは１０月２６日開幕の日本シリーズ進出を目指し、同１６日からクライマックスシリーズ（ＣＳ）最終ステージ（東京Ｄ）に臨む。 　選手に伝えたい。みんなを信じて良かった！　キャンプインの時、「みんな力を持っているんだから、それを結集してやれば、絶対勝てるから俺らは」って言った。最後の最後までもつれて苦しかったけど、ここまで来られた。みんな、すごいよ。できたんだよ。 　昨年まで２年連続Ｂクラス。今年も厳しいんじゃないかとか、周りに言われていた。見返してやるぞと思って「やってやろうじゃねえか！」とキャンプで言ったんだ。それで選手が奮起してくれた。ネガティブなことを言っていた人たちにも感謝かもしれない。 　勝負の分かれ道は９月だった。マツダの広島戦３連勝もだし、甲子園の阪神戦０―１、１―０もしんどい試合だった。あれを１つ取れたのが大きかった。昨年大きく負け越した広島、阪神と五分以上の戦いができた。それが全てだと思う。 　特に昨年日本一の阪神は意識した。最大の差は走塁。ワンヒットで一塁から三塁まで行く割合が全然違った。アウトを恐れて各駅停車になっていたから「暴走族になれ」と言って。先の塁を狙う姿勢がすごく出た。 　中でも岡本が変わった。ヘッドスライディングするようになったでしょ。２６日のＤｅＮＡ戦の重盗、本盗。ノーサインでビックリした。「おお！」って声出ちゃったもん。６月に４番を外すかもってコメントしたけど、言ってすぐ、岡本以外いないなって。姿勢で引っ張ってくれた。 　坂本は本人が一番苦しかったと思う。いつ現役やめたって「素晴らしい成績だったね」って終われる人なんだから、いい意味で開き直ってくれれば何も言うことない。終盤の勝負どころでは頼りになったよ。丸、菅野の存在も大きかった。ベテランの意地を見たね。 　前半は点が入らず苦戦した。ヘルナンデスが入って流れを変えてくれたと思ったら、離脱して。毎日ドキドキで「勝負事ってこんなにキツイのか」って。それでも誰かの穴を誰かがカバーできた。 　打順も悩んだ。開幕前は５番にバントもできる万能型を置きたいと言ったけど、想定外の連続で。理想と現実は違うんだって。そこが面白みでもあるんだけどね。理想は固定。優勝はできたけど、まだ伸びしろがあるってことだよね。 　監督として、常に前向きなことを言うようにしてきた。弱音を言ったって「お前がちびってるじゃねえかよ」って言われるでしょ。一丸となって「ヨッシャーやったるぞ！」みたいなモチベーションをどう持てるかを心がけた。みんな技術があるからプロになっている。大事なのはメンタル。プロ野球は精神論だよ。 　流れを変えたい時は１軍全員が入るグループＬＩＮＥを使った。「なるようにしかなんねえよ」とか「ちょっとチーンってなりかけてたぜ」「あしたシケた面して来んなよ！」とか。長野が「苦しんでも最後にみんなで笑いましょう！」って返信してくれたこともあった。 　我慢する大事さは終盤に浅野を使って分かった。監督って辛抱するのが仕事なのかもしれないなって。ミスして「すいませーん！」って大声で言えるようになった。前はショボーンとしてた。大成長。うれしいよ。１９歳の自分と置き換えたら、ちびってできないよ。 　去年の今頃はヘッドコーチとして本当に責任を感じていた。そんな中で原さんが背中を押してくれて大役を受け継いだ。コーチ陣、フロント含め感謝しかない。球団創設９０周年。優勝を厳命されているような年に優勝できて本当にうれしい。巨人は勝つことが使命。本当の意味で常勝球団になれるよう、僕自身もっと成長したい。最後にファンの皆さん、支えてくれたスタッフ、裏方さんにも言いたい。ありがとう！（巨人軍監督） 　◆阿部　慎之助（あべ・しんのすけ）１９７９年３月２０日、千葉県生まれ。４５歳。安田学園で通算３８本塁打。中大を経て２０００年ドラフト１位（逆指名）で巨人入り。１年目から強打の捕手として活躍し、１２年に首位打者、打点王、最高出塁率に輝きＭＶＰ。ベストナイン９度、ゴールデン・グラブ賞４度。通算２２８２試合で打率２割８分４厘、４０６本塁打、１２８５打点。１９年限りで現役引退し、２０、２１年は２軍監督。２２年の１軍作戦兼ディフェンスチーフコーチ、２３年のヘッド兼バッテリーコーチを経て今季から第２０代監督。右投左打。