戦略的投資を行うデータセンター事業の勝算は?--NTTデータグループ新社長に聞いてみた
勝算は「世界上位で居続けることが大事」 今後のデータセンター需要においては、Dubey氏が言うようにとりわけAI活用を支えるインフラ需要の急拡大が見込まれており、まさしく超有望市場だ。IDC Japanが先頃発表した「国内ハイパースケールデータセンター需要の長期トレンド分析結果」では、2045年末時点におけるハイパースケールデータセンターの需要量は、2023年における国内キャパシティーの約4倍に達する可能性があるとしている(図3)。 ハイパースケールデータセンターとは、Amazon Web Services(AWS)、Microsoft、Googleなどのメガクラウドサービス事業者(「ハイパースケーラー」とも呼ぶ)が、クラウドサービスを提供するために利用する巨大なデータセンターのことだ。その需要量拡大についてIDC Japanは、「特にAI機能をクラウドサービスで利用することが拡大しており、AIサーバーをハイパースケールデータセンター内に配備する例が増えている」との見方を示している。 ただし、超有望市場だけに、これまでにも増して競争が激しくなることは必至だ。果たして、どれほどの勝算があるのか。会見の質疑応答で聞いてみた。すると、佐々木氏は次のように答えた。 「今、当社のデータセンターのお客さまは、45%がエンタープライズ、55%がハイパースケーラーといった状況で、最近では特にハイパースケーラーの投資が非常に旺盛だ。そうした需要を取り込んで事業として順調に成長している。勝算という観点からすると、世界第3位に固執するわけではないが、今後も世界上位のポジションに居続けることが非常に大事だと認識している。そのために、これまでも培ってきたデータセンターの構築および運用の技術をさらに磨いていきたい。将来的には、NTTグループが推進している次世代ネットワーク基盤の『IOWN』を適用してさらに高品質なデータセンターを実現し、市場での存在感を一層高めていきたい。また、データセンターは相当な先行投資を要する事業なので、しっかりとしたキャッシュマネジメントが求められるが、その仕組みも盤石にした上で一定の投資を継続していけるように努めていきたい」 「世界上位のポジションに居続けることが非常に大事」との表現が印象的だった。先ほどNTTグループのデータセンター事業に対する筆者の関心について述べたが、これまではグループ各社が国内外でそれぞれにデータセンターを設けてきており、「どうして各社のデータセンター事業を統合しないのか」とかねて疑問に感じていた。それがこの数年のグループ再編によって、NTTデータグループに統合される形になり、データセンターがNTTブランドを代表する事業の一つになったというのが、筆者の印象だ。 さらに佐々木氏は、「グローバルに点在するデータセンターの上に、これからどのような付加価値を乗せていくか。これまで国内で培ってきたクラウドのマネージドサービスをグローバルに広げていくことも積極的に進めていきたい」と意欲のほどを語った。 同社のデータセンター事業のポテンシャルは大きい。NTTブランドを一層グローバルに広めていく大きなチャンスではないか。佐々木氏の経営手腕に注目したい。