夫がネットで募った数十人にレイプされた女性、法廷で証言 フランス
フランスで、男性が強力な鎮静剤で妻の意識を失わせてレイプし、インターネット上で募った見知らぬ数十人にもレイプさせていたとされる事件の裁判で、被害女性が23日、南部アヴィニョンの裁判所で証言した。 ジゼル・ペリコさん(71)は、これまでの裁判で明らかにされた証拠や証言について発言する機会を与えられるよう弁護団が求め、これが認められたことを受け、証言台に立つこととなった。 ペリコさんは法廷で、レイプを経験した女性たちに向け、「恥に思うのは私たちなのではなく、彼ら(加害者)の方」だと知ってほしいと語った。 また、審理を公開し、レイプとされる行為が映っている動画を法廷で再生するよう求めたことに関しては、「レイプされたすべての女性に、こう言ってもらいたい。マダム・ペリコがやったのだから、自分にもできると。女性たちにこれ以上恥じてもらいたくない」と述べた。 ここ数週間、複数の被告人の妻や母親、姉妹たちが証言台に立ち、被告人のことを「特別に優れた男性」だったと語るのを見てきたとペリコさんは言い、こう続けた。 「私が自宅で一緒にいた人もまさにそうだった」 「でもレイプ犯というのは、深夜に暗い駐車場で出くわすような人だけではない。家族や、友人の中にも存在するのです」 ペリコさんは、自分は「完全に破壊されてしまった」とし、自分自身を再び取り戻さなければならないと話した。そして「自分の一生が、理解に十分なものかはわからない」と付け加えた。 離婚して元夫となったドミニク・ペリコ被告(71)は、10年以上にわたり、インターネット上で見知らぬ人々を募り、自宅に招き入れて当時の妻に性的暴行を加えさせた罪に問われている。 ペリコさんは元夫を「ペリコ氏」と呼び、「今もドミニクと呼べていたらよかったのに。50年間一緒に暮らして、私は幸せで満たされた女性だった」と述べた。 そして、「あなたは思いやりがあり、気配りのできる夫だった。笑いも涙も分かち合っていたのに」と言い、声を詰まらせた。 ペリコさんは2021年に被告との離婚を申請した。 (注意:以下は人によって不快に感じる描写が含まれます) ■「どうしてこんなことを」 ドミニク・ペリコ被告は2010年から2020年にかけて、当時妻だったペリコさんに強力な鎮静剤と睡眠薬を密かに与えて意識を失わせ、インターネット上で募った見知らぬ男性たちにレイプさせていたことを認めている。 ペリコさんは健康上の問題に苦しんでいた時に被告がそばにいてくれたことを幸運に感じていたと語った。ペリコさんの健康問題については後に、被告が与えていた薬物との関連が明らかになった。 「私にとって完璧だった彼が、どうしてこんなことをしたのか、私は理解しようとしています。ここにきてどうして私を裏切ることができたのか。どうして見知らぬ男たちを私の寝室に招き入れたのかと」 「彼にこう伝えたい。私は常にあなたをより高みへと、光の方へ引き上げようとしてきた。だけどあなたは人間性の最も暗い深みを選んだ。この選択をしたのはあなただと」 ペリコさんによると、被告はよく食事を作ってくれ、夕食後にはアイスクリームを持ってきてくれた。これはペリコさんに薬を盛る手法だったのだと、後に被告は明かした。「よく彼に言ったものです。私はなんて幸運なのだろうと。あなたは最愛の人。私のことを本当によく気にかけてくれると」。 ペリコさんは頭がくらくらしたり、心拍数が上がったと感じたりしたことはなかったため、薬を盛られたらすぐに気を失っていたに違いないと付け加えた。翌朝、ベッドで目を覚ますと、かなり疲れを感じたが、長い散歩に出ていたせいだと考えていたという。 「私は婦人科系の問題を抱えていました。破水したような感覚で目が覚めた朝もありました。何かがあったと示すものはありましたが、それをどう読み解けばいいのか分かりませんでした」 ペリコさんは弁護団とのやりとりで、被告が劣等感に悩まされていた可能性についても検討した。ペリコさんと同僚の不倫や、当時の夫婦の社会的地位の差、ペリコさんは愛情を受けて幼少期を過ごしたが被告はそうではなかったという事実などが、劣等感につながったかもしれないとした。 ■「社会を変える意志と決意」で出廷 ペリコさんは法廷で、「自分は勇敢だと言われてきたが、これは勇敢になるということではなく、社会を変える意志と決意を持つということ」なのだと述べた。 「勇敢さとは誰かを救うために海に飛び込むことです。私にはただ、意志と決意があるだけです」 「だから私は毎日ここに来ています。(中略)たとえ言葉にできないほどひどいことを聞かされても、私をすぐ後ろで支えてくれる男性と女性全員のおかげで私は踏ん張っていられる」 また、公開での裁判を求めたことを後悔したことは一度もないと説明。「私に起きたことは二度とあってはならないことだから公開したのです」と述べた。 ペリコさんに対するレイプとされる行為は、ほとんどが動画で撮影されていた。 元夫と共にレイプ罪などで起訴された被告人の大半は、ペリコさんに対するレイプを否定。ペリコさんが意識を失っていたことに気づかず、レイプしているとは「知らなかった」ため有罪になりえないと主張している。 ペリコさんはほとんどの公判に出廷してきたが、証言台に立ったのはこれまで2回のみ。 前回証言台に立ったのは9月18日だった。ペリコ被告がインターネット上で募った男性たちが自宅に来て、寝たふりをしたペリコさんとセックスゲームをすることにぺリコさんは同意していたとする話が出たことについて、ペリコさんは「屈辱」を感じたと述べた。 「この男たちは私をレイプするために来たのです。この法廷で私が聞かされている内容はとても下劣でとても屈辱的なものです」 この事件の裁判はフランスで大きな関心を集め、ペリコさんはフェミニストの象徴的存在になっている。 弁護団は、裁判を公開で行うことで、負うべき「恥」を被告人に戻すことになるだろうと述べた。 フランスの十数の都市では19日、ペリコさんを支持するデモ行進が行われた。いくつかのフェミニスト団体もフランス政府に対し、レイプに関する法律を拡大し、同意に関する条項を含めるよう求めている。 裁判は9月2日に始まった。連日、長時間の審理が行われているが、被告人の数が多いため、まだ半数ほどの尋問しか終わっていない。 判決は12月下旬に出される見通し。 (英語記事 Gisèle Pelicot takes stand in French mass rape trial)
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