日産、経営危機が再燃 リストラ策まとめるも成長戦略は描けず 「再生」へ正念場
成長戦略から8カ月でリストラ
新型車投入による短期的な打開が難しく、コスト低減による収益力アップも見込めない中、今年3月に策定した、3年後に販売台数を100万台増やし、営業利益率を6%以上とする中期経営計画の実現は早くも困難になった。 このため日産は計画を見直し、リストラ計画を策定した。 具体的には、生産ラインの統廃合やシフトの見直しによる人員配置の変更などで、グローバルで生産能力を2割削減するとともに、人員もグローバルで9000人削減する。年間350万台の販売台数で継続的に投資しながら安定した経営ができる収益構造に変革していく。「ビジネス環境が変化しても柔軟・機敏に対応できるスリムで強靭な事業構造に再構築」(内田社長)する方針だ。設備投資や研究開発費についての優先度も見直す。 また、日産の持分法適用会社で、約34%出資する三菱自動車の株式の10%分を三菱自に約686億円で売却し、財務の改善を図った。ただ「三菱自の経営戦略をサポートすることが目的」(内田社長)と説明し、日産の財務体質の改善が目的との見方を否定する。 中期経営計画を策定してからわずか8カ月で軌道修正することから、内田社長は11月から報酬の50%を返上、経営会議メンバーもそれぞれ報酬の一部を自主返納する。内田社長は「再び日産を成長軌道に戻す道筋をつけることが社長としての最大の役割と認識しており、果たすべき役割をやり遂げる覚悟」と述べ、続投して日産の再建に意欲を示した。 カルロス・ゴーン元会長の退場に伴う経営の混乱や、ルノーとの資本関係見直しなどがありながらも、業績が回復し、一旦は経営が落ち着いたはずの日産。しかし、市場環境の変化への対応の遅れや、成長戦略の失敗から、一転して厳しい状況に置かれている。 当面のリストラ策をまとめたものの、日産の「再生」に向けた光は見えてこない。 (編集委員・野元 政宏)