田原俊彦さんは15歳でジャクソン5「I Want You Back」に脳天を撃ち抜かれた…MJ見続け48年【私の人生を変えた一曲】
リズミカル! ゴム人間かというくらい動きが柔らかい
ジャニーさんに「ユーなの?」と言われ、2階席で一緒にショーを見ました。幕あいにご飯を食べに行くことになり、入ったのが有楽町の「ジャーマンベーカリー」という洋食屋さん。そこでナポリタンをごちそうになった。今でも覚えてます(笑)。その時「僕も歌って踊ってやりたいと思ってます」と言ったら、「じゃあ来週からレッスンに来なさい」と言っていただき、毎週末レッスンに通うようになりました。 9月でしたね。合宿所にいたら、ジャニーさんがでっかいオープンリールのデッキを持ってきまして。その時みんなに見せてくれたのがジャクソン5の「I Want You Back」。まだ11歳のマイケル・ジャクソンがお兄さんたちに交じって、メインボーカルで歌ってた。リズミカル! この人はゴム人間かというくらい動きが柔らかい。そんな彼が歌って踊るシーンを見て、脳天を撃ち抜かれた感じがしました。それぐらいの衝撃でした。 それを僕が見たのは15歳。マイケルは僕より2つ上だけどその時は18歳になっていた。ソロデビュー前後、アルバムの「トライアンフ」を出したくらいでしたね。 日本ではというと僕が田舎で見ていたのは沢田研二さん。ジュリーはスーパースターでした。その下に新御三家といわれた西城秀樹さん、野口五郎さん、郷ひろみさんがいて、女性は山口百恵さん、キャンディーズ、ピンク・レディーとか。でも、マイケルは日本のスターと比べて衝撃の度合いが違っていた。歌って踊るエンターテインメントはマイケルが基本だと思いましたね。マイケルはその後ソロになり、スターダムを一気に駆け上がって、アルバム「Thriller(スリラー)」(1982年)でドカンと売れます。
マイケルだけは来日するたびに見に行きました
僕はドラマ「3年B組金八先生」で人気になり80年のデビュー曲「哀愁でいと」がヒットしましたが、その間もマイケルを見続けました。20代から30代、40代、彼が50歳で亡くなるまでショーを作る上でもずっと参考にさせてもらいました。曲の並び、セットリストから照明、衣装なんかもちょいちょいマネして。マイケルが手袋をしたら僕も手袋をする、ボルサリーノをかぶって踊ったら僕もかぶる、ムーンウオークも習得する……。 マイケルは4回ツアーで来日し東京ドームなどで公演を行っていますが、全部見に行ってる。これまでロッド・スチュワート、ビリー・ジョエル、ダイアナ・ロス、マドンナ、ジャネット・ジャクソンら外国の名だたるアーティストの公演に行ってるけど、どれも1回こっきりです。でも、マイケルだけは来日するたびに見に行きました。 どんなショーをやるのか、どんな動きをするのか……そういう意識で見ていましたね。毎回やる曲はそれなりに決まっている。でも、それでも飽きない。何回見ても盗むところがあるから。マイケルに関しては僕はちょっと異常でしたね。 80年代になって「スリラー」のミュージックビデオが出た時もセンセーショナルでしたね。あの時は「Billie Jean」や「Beat It」(ともに82年)のシングルミュージックビデオも作られた。もう少し後に出た「Ghosts(ゴースト)」にもすごく刺激を受けました。 過去のワールドツアーのステージをYouTubeでいつでも見ることができるようになりました。それを今も夜な夜な見ています。見始めると2時間はアッという間ですね。夜はリビングの明かりなんかが窓に映るじゃないですか。踊る姿も映って見えるからやってみたりね。僕のパフォーマンスは田原俊彦オリジナルだけど、かなりマイケルを意識しているし、それは僕にしか出せないものだという思いはありますよ。 マイケルは一番リアルタイムで見てきたアーティストで、同世代。30年以上も見てきたのでやはり特別です。しかも、僕の場合、ソロだから、自分で掴んだものをそのままオリジナルで動くことができる。グループのように合わせる必要がないから、マイケルを見て学んだスキルを自然と反映させることができる。それも強みだと思っています。 好きな曲といわれたら「I Want You Back」以外では、ひとつは初期の「Rock With You」。全身スパンコールでカシャーンて感じの衣装の。まだ「スリラー」に行く前のブラックコンテンポラリーのノリもよくて。それから「Billie Jean」と、「Smooth Criminal」。この3曲かな。 ツアーには何度も行ったけど、直接会ったことはないです。会っちゃダメでしょ。メチャ緊張するだろうし、「フー」なんて言ったら怒られそうじゃん(笑)。 うれしかったのはロス五輪(84年)の時。現地を聖火ランナーで走ったら「日本のマイケル」って紹介された。マイケルには失礼かもしれないけど(笑)。