暮れゆく石炭発電の時代【寄稿】
英国最後の石炭火力発電所が先月30日に操業を停止した。1882年にロンドンで世界初の石炭火力発電所が稼動してから142年。ウクライナ・ロシア戦争によって欧州のエネルギー需給が容易でない状況でも、英国がこうした勇気ある選択をした理由は明らかだ。英国は、世界的に急速に進んでいる再生可能エネルギー中心のエネルギー転換の流れを逃すまいとしたからだ。「ブレグジット」以後、多少よろめいてはいるが、英国は英国だ。世界の石炭使用量が今年から減少傾向に転じることが確実視される今、産業革命を主導し人類文明の最も速い成長を牽引した英国が、一番先に石炭をやめて先頭に立っているのだ。 確かに時代が変わりつつある。化石燃料の時代が終わり、再生可能エネルギーの歴史が始まっているのだ。石器時代は石が足りなくて終わったのではない。同様に化石燃料の時代は化石燃料がなくなって終わりを迎えているわけではない。根本的な理由はとてもシンプルだ。何よりもすでに化石燃料より再生可能エネルギーの発電単価がはるかに安くなり、今後も価格下落がさらに加速するであろうことが明確になったためだ。また、中央集中型の大量生産消費方式である火力発電や原子力発電に比べ、脱中央化、連結、共有、開放など、第4次産業革命技術が指向する価値が世の中に位置するほど効率が極大化されるエネルギー源であるためだ。 しかし、こうしたエネルギー転換の必要性にもかかわらず、世界各国は現実的な挑戦に直面している。国際情勢があまりにも不安だからだ。数年間続いているウクライナ・ロシア戦争は、欧州のエネルギー安保を激しく脅かしており、最近激化しているイスラエル・イラン戦争は中東の地政学的不安を高め、国際原油価格を乱高下させている。韓国も同様に、このような不安定な国際情勢の中で、炭素中立2050という厳しい課題と共に、当面のエネルギー安保問題を同時に解決しなければならない非常に難しい課題に直面している。 英国の脱石炭過程で最も重要だった点は、何よりも政府の強い意志だった。英国は2008年、世界で初めて温室効果ガス削減義務を規定した気候変動法を制定して以来、非常に積極的かつ迅速に関連法と制度を設け、これを強力に施行してきた。その結果、2012年基準で約40%に迫っていた石炭火力発電の割合を、わずか10年余りで完全にゼロにするという驚くべき成果を成し遂げた。韓国はどうか? 最近韓国で起きていることに目を向けてみよう。韓国電力は湖南(全羅道)、東海岸、済州などに、送電線路不足を理由に2032年まで新規太陽光・風力の設置を制限した。グローバルトレンドを考慮すれば本当に信じられない選択だ。韓国政府が再生可能エネルギーの拡大に積極的かつ真面目に取り組んでいたなら、決してこうした流れにはならなかっただろう。 歴史は私たちに重要な教訓を与えてくれる。特に、技術革新の流れを読めずに衰退した国の事例は、今日の私たちに示唆するところが大きい。清の没落、スペイン帝国の衰退、オスマン帝国の敗亡は、いずれも新しい技術パラダイムを受け入れられなかった結果だった。私たちはこのような歴史の教訓を振り返って、再生可能エネルギー中心に改編されている世界的なエネルギー大転換という時代の流れを決して逃してはならない。今、私たちに必要なのは、現実的でバランスの取れたエネルギー政策だ。韓国政府も英国がそうだったように、今からでも韓国の実情に合ったエネルギー転換ロードマップを原点から見直さなければならない。その核心は電気にある。どうすれば今のように安定的に電気を供給しながらも、その供給源を多角化し分散できるか。これが私たちが解決しなければならない最も重要な宿題だ。 キム・ベクミン|釜慶大学環境大気科学科教授 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )