笹生優花、世界ランク6位に急浮上 日本勢初のメジャー複数回制覇でパリ五輪代表候補トップに躍り出た
◆米女子プロゴルフツアー メジャー第2戦 全米女子オープン 最終日(2日、米ペンシルベニア州ランカスターCC=6583ヤード、パー70) 2021年大会覇者の笹生優花(22)=フリー=が、男女を通じて日本勢初となるメジャー複数回制覇の快挙を果たした。3打差5位から出て5バーディー、1ボギー、1ダブルボギーの68で回り、通算4アンダーで逆転V。22歳11か月13日で最年少記録の大会2勝目を達成した。世界ランクは30位から6位に浮上し、24日に決まる今夏パリ五輪の日本代表争いで圏外だった4番手から最有力候補となり、フィリピン代表で出場した21年東京に続く、2大会連続出場に大きく前進した。渋野日向子(25)=サントリー=が単独2位に入った。 大観衆が見つめる18番グリーンで、笹生がとびっきりの笑顔で世界最古の優勝トロフィーを高々と掲げた。 「メジャーで勝ちたかったので、難しいチャレンジを楽しんだ。すごくうれしいし、感謝の気持ちでいっぱい」。優勝インタビューを流ちょうな英語で答え、「両親に恩返しできて、うれしく思う」と語ると、大きな瞳からうれし涙がぽろぽろとこぼれた。 多くの選手が難しいセッティングに苦しむ中での逆転劇。最終日は笹生の強さが凝縮されていた。ドライバーで圧倒的な飛距離を稼ぎ、正確無比のアイアンショットで寄せた。圧巻は232ヤードに設定された16番パー4。グリーンを越えるリスクやショットが乱れる可能性もあったが、ドライバーの次に飛距離が出る3ウッドを握った。同組の小祝さくら(26)や渋野が1打目ではグリーンに乗らなかったが、自慢の飛距離を武器に、1オンに成功。下りの5メートルを残し、2パットで沈めてバーディーを奪った。後続との差を3打に広げ、勝利をたぐり寄せた。 日本勢の誰もなし得なかったメジャー2勝の偉業。優勝賞金でも21年大会の100万ドル(当時のレートで約1億1000万円)から2・4倍に増額され、米女子ツアーの過去最高額となった240万ドル(約3億7680万円)を獲得した。 昨年は全米女子プロ選手権2位、エビアン選手権3位とメジャーで上位に食い込むも、頂点には届かなかった。「3年間勝てず、もう勝てないんじゃないかという疑念も少し浮かんでいた」と笹生。テキサス州に家を買い、米大リーグで活躍したイチローさんも使った鳥取市内の研究施設のトレーニング器具を取り寄せ、可動域を意識したメニューをこなした。「長く待った分、格別」と歓喜に浸った。 二人三脚で歩んできた父・正和さん(66)が最終日も普段と変わらず、1番から見守った。優勝が決まると抱き合って喜んだ。笹生は「21年はフィリピン代表としてプレーして勝て、母も喜んでくれた。今は日本代表として、プレーして勝つことができて、今度は父にささげることができてとても幸せ」と話した。 メジャー制覇を果たしたことで、大詰めのパリ五輪代表争いでも日本勢の4番手から大きくポイントを積み上げ、1番手に浮上した。21年東京五輪は母の母国・フィリピンの代表として出場し9位。21年11月に日本国籍を選択しており、パリでは日本代表での出場を狙う。次は4年に一度の舞台。代表決定は24日だ。「この経験をまた生かしていきたい」と笹生。花の都で日の丸を掲げる戦いを描いた。 ◆笹生に聞く ―どのあたりで勝てると思ったか。 「最終ホールで、最後に(パットが)決まってから。他の選手がどういうプレーをしているかは気にしなかったし、リーダーボードも見なかった。見ることで、過度にリラックスしたくなかった」 ―後半に4バーディー。 「スコアボードを見たが、リラックスしていつものルーチン、プレーにフォーカスした」 ―3打差を逆転してのV。 「1番でいいティーショットを打てたし、自分のプレーも安定していたと思う」 ―幼少期の練習について。 「家の大きな鏡の前で、何度も素振りをした。スクールに行く前も帰った後も。練習は(毎日)12時間」 ―3年前と今年で喜びに違いはあるか。 「最初も今回も全く一緒というわけではないが、いい思い出になると思う。自分も今年で23歳になるし、いろいろな経験をしてきた。これからも楽しみ」 ◆全米女子オープン 5大海外メジャーの一つで、1946年に創設。今年で79回目の開催。全米ゴルフ協会が主催する女子最古のメジャー大会で、格式と優勝賞金、賞金総額が最も高い。優勝者はトロフィーと金メダルを授与される。コースは毎年、難設定で深いラフ、狭いフェアウェー、硬いグリーン、長い総距離が特徴的。 ◆笹生が達成した記録 ▽米ツアー2勝はともにメジャー 朴セリ、田仁智(ともに韓国)以来3人目。 ▽最年少22歳での大会2勝目 複数回優勝者は大会16人目。1978年大会のホリス・ステーシー(米国)の24歳4か月7日を更新。米国勢を除くと、いずれも元世界ランク1位のアニカ・ソレンスタム(スウェーデン)、カリー・ウェブ(豪州)、朴仁妃(韓国)に続く4人目。 ▽日本勢のワンツーフィニッシュ 21年大会の笹生、畑岡奈紗以来、メジャー史上2度目。 ◆笹生 優花(さそう・ゆうか)2001年6月20日、日本人の父・正和さんと、フィリピン人の母・フリッツィさんとの間に母の母国で生まれた。22歳。8歳の時、フィリピンでゴルフを始める。18年アジア大会で個人&団体金メダル。19年オーガスタ女子アマ3位。東京・代々木高在学時の同年秋に日本のプロテストに合格。20年8月のNEC軽井沢72で日本ツアー初優勝し、次戦で2連勝。21年6月の全米女子オープンで米ツアー初V。きょうだいは妹1人、弟3人。166センチ、63キロ。
報知新聞社