価格転嫁が拡大した企業は3割にとどまる 交渉進むもコスト上昇に追いつかず
価格転嫁に関する実態調査-価格転嫁の状況分析(2024年2月・7月比較)-
帝国データバンクが2024年8月28日に発表した最新の価格転嫁率の平均は44.9%と、前回2月に実施した調査から4.3ポイント上昇した。一方で、全く価格転嫁ができないと回答した企業が1割を超えるなど、企業が価格転嫁を進めることは依然として厳しい様子がうかがえた。そこで、2024年2月および7月調査に連続で価格転嫁の割合を回答した企業7,675社を対象に、価格転嫁状況の変化について分析した。
2月の価格転嫁状況と7月の同状況を比較すると、価格転嫁率が「拡大」した企業は32.4%にとどまり、「縮小」した企業は20.8%だった。また、変化がなかった「横ばい」企業は46.7%と半数近くを占めた。 半年程度では転嫁状況に大きな変化はなく、コストの上昇に価格転嫁の状況がなかなか追いつけない状況といえる。
とりわけ、2月に「全く価格転嫁できない」とした企業のうち、7月も同じく「全く価格転嫁できない」とした企業の割合は50.5%だった。一方で、49.5%の企業は『多少なりとも価格転嫁できている』と好転し、『5割以上』転嫁ができている企業は9.4%と1割近くとなった(「10割(すべて転嫁できている)」「8割以上」「5割以上8割未満」の合計)。 企業からは「交渉により徐々に単価の見直しができてきている」(ソフト受託開発)や「輸入品の値上げが、スムーズに受け入れられる土壌ができてきた」(薪炭卸売)といった声が寄せられ、価格転嫁に関する風向きが厳しいながらも変わりつつある。
賃上げ実現には、継続的な価格転嫁の拡大が必要不可欠
本調査では7000社を超えるパネルデータで価格転嫁状況の変化を確認した。約半年間で価格転嫁率が拡大した企業は約3割にとどまっており、大きな変化は生じていなかった。原材料やエネルギー価格の高止まりや人件費の高騰などのコスト上昇に対して転嫁に取り組んでいても、追いついていない状況がうかがえる。さらに転嫁を進めて価格を引き上げることは、取引先や消費者の客離れを引き起こしかねないと危惧する声も少なくない。一方で、全くできなかった企業であっても一部転嫁が進む兆しは表れた。 今後の最低賃金の引き上げなどを含めた賃上げを実現するためには、継続的な価格転嫁率の拡大が必要不可欠といえよう。 <調査概要 > (2024年2月調査) 調査対象企業:2万7443社 有効回答企業:1万1267社(回答率41.1%) 調査期間:2024年2月15日~2月29日 調査方法:インターネット調査 (2024年7月調査) 調査対象企業:2万7191社 有効回答企業:1万1282社(回答率41.5%) 調査期間:2024年7月18日~7月31日 調査方法:インターネット調査