横浜F・マリノスが“古典的な”スタイルのアルアインに先勝。クラブ史上初のアジア王者まで後少し
もちろん、カップ戦で格上を倒して優勝を狙うためにそういう戦い方を選択することは当然のことだ。昨年(2022年度)のACLの決勝では、浦和レッズがアルヒラルに対して守備を固めてカウンターを狙いに徹して勝利してアジア王者となっている。
早々にリードしたことで、アルアインはカウンター狙いの形をますます徹底した。
これを攻め崩すのは容易なことではない。横浜FMは何度もチャンスを作ったが、GKのハリド・エイサが当たりまくり、またゴールポストにも嫌われてどうしても得点できない。
こういう展開になると、焦って攻撃を仕掛けてさらにカウンターを狙われていた可能性もある。だが、横浜FMの選手たちは冷静だった。相手のカウンターに対して警戒を怠ることなく、落ち着いて攻撃して焦らずにゴールを狙い続けた。それが、逆転劇につながった。苦しい中でも規律を守りきったことこそが、一番の勝因だった。
そして、72分になってようやく右からのヤン・マテウスのクロスに合わせた植中が決めて同点ゴールが生まれた。
相手が中央の守備を固めてきた時の打開策の一つが2列目からの攻撃参加だ。
植中の得点はまさにこの形だった。ゴール前を固めていたアルアインの守備陣は植中よりワンテンポ遅れて入ってきたアンデルソン・ロペスに集中してしまったため、植中をフリーにしてしまい、ヤン・マテウスのクロスはアンデルソン・ロペスの頭を越えてフリーの植中のところに落ちた。
決勝ゴールとなった2点目も、やはり2列目の渡辺皓太だった(渡辺は、60分からアンカー・ポジションでプレーしていたが、植中の故障で山根陸が投入されてから、渡辺は2列目に上がっていた)。
渡辺の得点は、最初はオフサイドの判定だった。右サイドのヤン・マテウスからのクロスを宮市亮がボレーシュートを試みた瞬間、渡辺がオフサイドのように見えたのだ(僕自身もオフサイドだと思った)。
だが、実際にはマティアス・パラシオスがゴールライン近くに残っており、渡辺はオンサイドだった。パラシオスがラインより遅れていたので、ギリギリのラインを見ている副審にはパラシオスが目に入らなかったのだろう。