パルコ店長から百貨店店長に 大丸東京店・緒方店長がねらう「化学反応」
WWD:デベロッパー業であるパルコとは組織体制も異なる。
緒方:心斎橋パルコが社員25人前後で現場を回すのに対し、大丸東京店は230人前後が働く。パルコは渋谷、心斎橋、名古屋のような旗艦店の店長も部長級。大丸松坂屋の場合、主要店舗の店長は執行役員になる。店舗には人事機能もある。百貨店の店舗は一つの会社のようなものだと思う。
WWD:店長の仕事も異なるのか。
緒方:パルコの店長はプレイングマネージャーのような存在だ。店舗の改装も主導し、アパレルなどの取引先にも商談に行く。一方、社員が多い百貨店は組織の役割分担がしっかりしているので、店長の仕事はマネジメント型になるのかなと感じている。ただ、私が百貨店に呼ばれたのは化学変化を期待されてのこと。新しい店長の姿を探っていきたい。
WWD:毎朝の開店時に入り口に立って客入れもするのか。
緒方:店舗にいる時は可能な限り立つようにしている。これもパルコにはない新鮮な習慣だ。百貨店の店長の責任は重い。例えば、月1回の飲食店の衛生チェックも私が白衣を着て、厨房の確認に立ち会う。スプリンクラーや避難経路の確認など防災点検も店長の大切な仕事だ。店長が現場の隅々まで責任を持つ。お客さまからのクレーム対応も取引先ではなく、まず百貨店が受け付ける。百貨店は提供する商品とサービスの全てに責任を持つ。のれんとは、こうして長い時間をかけて築かれてきたのだと実感している。
異例の人事に「え?なんで?」
WWD:今回の異動では、緒方さんともう1人、渋谷パルコの店長だった塩山将人さんも大丸札幌店の店長になった。JFRとしての思惑があるはずだが、内示で何か言われたか。
緒方:JFRの好本達也社長(当時)に「大丸東京店の店長をやってくれ」と言われて、「え?なんで?」という感じだった。驚いたけれど、自分は何事もポジティブに受け取る性格だ。業態も違う、管理手法も違う。でもお客さまの期待に応える仕事の本質は変わらない。好本さんからは「これまでの経験も生かして、新しい目で東京店を見てくれ」と言われた。百貨店の伝統とパルコの革新の融合を託されたのだと解釈している。