サザン、福山雅治、Adoほか…最新CMソングで「視聴者がクギづけになる」注目曲がわかった
懐かしい曲を今のアーティストが歌うのがトレンド
「最近のCMソングは、懐(なつ)かしい曲を今のアーティストが歌うのがトレンドです。原曲をリアルタイムで聴(き)いていた中高年はもちろん、ネットで馴染(なじ)みのある若い人にも訴求効果が期待できますから」 【画像集】神々しい…!河合優実、綾瀬はるか…女優たちがレッドカーペットに…!(写真15枚) こう語るのは、テレビの視聴データ分析会社『REVISIO』(以下、R社)カスタマーサクセス担当・青柳汰一氏だ。 R社は今年1月から11月に初回放送された歌詞つきBGMの流れるCMが、どれだけ注目されたかを独自の分析でスコア化。テレビのスイッチを入れているだけで上がる視聴率とは違い、視聴者が顔を画面に向けじっくり見ているかをもとに測定している。100を平均として、注目(クギづけ)度の高いCMベスト30をランキングしたのが上の表だ(具体的な分析の仕方については最下の【測定方法】をご覧いただきたい)。 実際にランキングをみてみよう。冒頭で紹介したトレンドを象徴するCMソングが、女優の河合優実(ゆうみ)(23)が歌う『なんてったってアイドル』(6位)だという。R社の広報/マーケティング担当・安武早織氏が解説する。 「宇宙人役のトミー・リー・ジョーンズが、日本独特の風習に触れ感化されるサントリーのコーヒーのCMです。アイドルに扮(ふん)した河合さんが、大勢のファンの前で’80年代に小泉今日子さんが歌った同曲を熱唱。歌のインパクトが強く、商品自体の宣伝効果が薄いように感じますが問題ありません。以前は15秒から30秒の短い時間で、商品の特性をできるだけ多く説明する必要がありました。今は、注目されることが大事。視聴者が『なんのCMだっけ』と思えばネット検索できますし、SNSでインパクトの強さが拡散されれば宣伝効果が倍増しますから」 『アイナ・ジ・エンド』(29)の『川の流れのように』(9位)も、流行に乗ったCMソングだ。安武氏が続ける。 「当該のサントリー生ビールは比較的新しい商品で、上白石萌音(かみしらいしもね)さんらが出演しています。『アイナ・ジ・エンド』さんが商品のイメージに合わせ、美空ひばりさんのしっとりとした歌を勢いのあるロック調で歌唱。『昭和の歌姫』の代表曲を、若者を意識してうまくアレンジしたのが視聴者をクギづけにした要因でしょう」 ◆「最高のBGMでしょう」 CMの世界観や訴えたいことが、歌とマッチするかどうかも重要な要素だという。『忘れらんねえよ』の『これだから最近の若者は最高なんだ』(1位)は、マッチングがうまくいった好例だ。 「お笑いコンビの『かまいたち』や鈴木伸之さんが侍の格好で登場する、出だしからインパクトの強いアコムのCMで、勢いのある『これだから~』は引き立て役としてピッタリの曲です。福山雅治さん(55)の『桜坂』(2位)も、U-NEXTの訴えたいことをうまくバックアップしている。CMで同社は、事業展開の幅広さを宣伝しています。福山さんの『桜坂』は馴染み深い曲ですんなりと耳に入り、同社の主張を邪魔しない最高のBGMでしょう。福山さん本人が出演しているのも注目度が高い一因です」(同前) Ado(22)の『DIGNITY』(7位)も、CMや商品の世界観にピッタリの選曲だ。前出の青柳氏が話す。 「雄大な海と迫力ある艦船の映像が流れる、アマゾンプライムビデオ『沈黙の艦隊』のCMです。Adoさんは『うっせぇわ』など過激な曲を歌うイメージがありますが、このCMでは壮大なバラードで聴く人を惹(ひ)きつけている。世界観にマッチするうえ、Adoさんの意外性が注目度を上げています。『サザンオールスターズ』の『メロディ』(16位)や『YOU』(17位)はライブで盛り上がるような曲でなく、優(やさ)しさ溢れる歌です。ユニクロが求める服の肌触りやぬくもりを、うまく表現しています」 放送コラムニストの高堀冬彦氏が、過去にヒットしたCM曲について解説する。 「歌の重要性を際立たせた象徴的な存在が、’61年から放送されたレナウンのCMです。小林亜星さんが作詞作曲した『ワンサカ娘』を、世界的アイドルだったシルヴィ・バルタンが歌い爆発的にヒット。以後CMソングとして、タイアップ曲や有名歌手の歌が一般的になります」 今回発表したランキングベスト30の中に、今年の新曲が少ないことに高堀氏は驚きを隠せない。 「それだけ幅広い層に受ける、国民的な歌が出づらいという証拠でしょう。懐かしい名曲を使うのも納得です。佐藤竹善さん(61)の『I Feel Coke ’87』(22位)は’80年代後半に流れた、バブル時代を象徴する爽(さわ)やかな曲。マクドナルドは当時の明るい歌で、消費者マインドを前向きにする意図があるのでしょう」 ヒットCMには名曲が不可欠。CMソングは世相も反映しているようだ。 ◆「CMソング注目スコア」測定方法 R社が関東で2000世帯(約4800人)、関西で600世帯(約1500人)ほどの協力を受け、視聴者がどれだけテレビ画面を注視していたかを測定した。画面に目が向けられていた秒数を独自の方法でスコア化。100を平均とし数値が上がるほど注目の度合いは高くなる。他の作業をしながらの「ながら見」では画面が見られていないことが多いので、スコアは上がらない。対象は’24年1月1日から11月26日に初回放送されたCM。歌詞のないBGMや替え歌が流れたものは除外。さらに期間限定で測定が難しいCMも省いた。一方、原曲の歌詞のまま別の歌い手がカバーしたCM(例『なんてったってアイドル』)はランキング対象としている。 『FRIDAY』2024年12月27日号より
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