【2024衆院選 エネルギー政策】現下の課題見据えて(10月22日)
衆院選は、脱炭素社会実現に向けたエネルギー政策も争点の一つとなっている。原発については、東京電力福島第1原発事故で浮き彫りになった課題をいかに克服し、過酷事故に備えるかが重要になる。先行き不透明な核燃料サイクルや使用済み核燃料の最終処分への対応も不可欠だ。 地球温暖化防止に向けた化石燃料の利用削減が求められる中、電力消費は人工知能(AI)の普及に伴い、急激な伸びが予想されている。需要の増加に応えるには、どのようなエネルギー構成が最適なのか。明示するのは政治の大きな責務と言える。 原発の再稼働について、自民党や公明党は、安全確保と立地自治体などの理解を前提に進める考えを示す。立憲民主党は、実効性のある避難計画の策定と地元合意を条件とした。日本維新の会と国民民主党は、安全確保などを条件に早期再稼働に積極的な立場を取る。共産、れいわ、社民各党は脱原発を掲げている。 13年前の福島第1原発事故は、巨大地震による津波で全ての電源が失われて起きた。原発事故を巡る訴訟は、大津波の発生と、大津波による事故を予見できたかなどが争点となり、司法の判断が一部分かれた経緯がある。
北陸電力志賀原発が立地する能登半島の地震では道路が寸断され、原発事故発生時の避難経路の確保に懸念が生じた。放射線を防護できる施設の充実も迫られている。 原発の安全確保や、事故発生に備えた対策は、なお途上にある。事業者だけでなく、国や原子力規制委員会などの役割も問われてくる。原発を巡っては、新たに浮上したさまざまな課題を踏まえた対策、政策が欠かせない。 使用済み核燃料は、大半が青森県六ケ所村の再処理工場に運び込まれる計画だ。しかし、着工から30年以上たった今も操業に至っていない。最終処分場の候補地も決まっていない現状を、どう打開するのか。核燃料サイクルを巡る現実を直視し、有権者に考えを提示してもらいたい。 太陽光など再生可能エネルギーは、多くの党が普及拡大をうたっている。ただ、環境保護の観点で新規開発を規制したりする動きも広がっている。環境とどう調和させるかなど今日的な課題解決策も求められる。(渡部総一郎)