侍大学生への指導はOKなのに…NPB選手も不安視「プロアマ規定」は今後緩和が進んでいくのか
3月に実施された侍ジャパンの欧州代表との強化試合では、大学生4人が選出されたことが大きな話題を呼んだ。侍を率いる井端弘和監督(49)の方針によるもので、選ばれた明大・宗山塁内野手(4年=広陵)、関大・金丸夢斗投手(4年=神港橘)、西川史礁外野手(4年=龍谷大平安)、愛知工大・中村優斗投手(4年=諫早農)の4選手は、いずれも今秋ドラフトの上位候補として挙げられている。 【写真】侍ジャパンで投げる関大・金丸夢斗投手 ドラフト指名前の大学生が侍ジャパンに選ばれたことはこれまでなかった。短期間ではあったが、大学生がプロ野球選手が間近で接し、技術などのアドバイスを受けたことは大きなプラスとなったはずだ。実際に宗山は同じ遊撃手で守備の名手・西武源田らに技術論、心構えなどを伝授された。金丸はオリックス宮城からスライダー、西武隅田からはチェンジアップの投げ方を教わり、今春の関西学生野球のリーグ戦での登板に生かしていた。 本来のルールでは、通称「プロアマ規定」によって大学生(高校生、社会人も含む)は、プロ野球の球団に所属するの選手、コーチらからの指導を受けてはいけないことになっている。今回は例外なのか。学生とプロ野球経験者の関与を制限する憲章を定める日本学生野球協会の担当者に確認したところ、「公式に選出されているので、一緒に練習なり試合をして何かを教わるのは何の問題もないです」と説明した。侍ジャパン入りした4人はこれまであり得なかった絶好の機会を得ることができた。 ただ、逆手に取れば侍ジャパンに選ばれなければプロの現役選手から技術指導を受けることはできない。プロ経験者が学生野球を指導するには、研修を受けて資格回復の手続きを行い、プロ球団の退団が条件となっている。だが、現役選手が取得できる指導資格はない。個人的には「プロアマ規定」が日本の野球の全体的なレベルアップを妨げてしまっているのではないか、とあらためて思った。 「プロアマの壁」が出来てしまったきっかけは、約半世紀前までさかのぼる。1961年(昭36)に中日が柳川福三外野手(日本生命)と強引に契約する「柳川事件」を発端に、プロ側の過熱したスカウト活動が表面化。不信感を強めた社会人側はプロとの断絶を表明し、日本学生野球協会も同調した。その後は1999年(平11)に社会人チームがプロ退団者の受け入れを開始し、00年のシドニー五輪ではプロアマの合同チームで出場。13年には学生野球資格回復制度が制定されるなど、「プロ」と「アマ」は年を重ねるごとに徐々に歩み寄りつつある。 ただ、NPB某球団の主力選手は「僕たちが指導しちゃいけない意味がわからない。(ルールは)いらないと思ってます」と断言。「同じスポーツでお互いに良くなろうと思ってやっているのに、プロだからアマだからというはおかしい。それを押し通すなら『日本代表』に学生を入れることもよくないと思う」。また「(学生と)接触しちゃいけないみたいな感じですけど、食事もダメなのか、トレーニング施設で話すこともダメなのか、説明を受けてないのでわからない」と疑念と不安を抱いていた。 オフシーズンに母校で自主トレを行う場合は所属連盟への事前連絡が必要で、「あいさつ、自己紹介や激励などの話は差し支えないが、技術指導を伴うミーティングをすることはできない」「トレーニング中、ここの部員に気がついたアドバイスをすることは差し支えないが、ノックをするなどの指導はできない」などの申し合わせ事項があり、自由に指導することはできないことになっている。 ドラフトに関わるなどスカウト活動の制限があるのは理解できるが、「技術指導」の制限は何のためにあるのか。野球競技人口の減少が進んでいる昨今、現役選手、野球の技術向上に取り組むさまざまな学生に対して、何の気兼ねもなくアドバイスを送ることができる日が来ることを、多くのプロ野球関係者たちは待ち望んでいる。今後の制度の緩和に期待したい。【アマチュア野球担当=古財稜明】