フルコース料理に進化!?日本のとんかつが外国人旅行者に人気の理由
カツレツから日本独自の「とんかつ」に進化
グルメ大国日本では、料理の質を追求し進化させたジャンルで流行が生まれる、加速することが多い。以前、『日本外食全史』(亜紀書房)を書いた際にも感じたが、蕎麦にやきとり、天ぷらといった、もともとは屋台で出していた料理も、江戸時代からずっと、人気が出ると高級化する傾向があった。 とんかつはヨーロッパから入ってきたカツレツからの発展なので、レストラン料理だったのが、サクサクに揚げ和食化してきたので少し経緯は違うが、次第に庶民の気軽な食事になっていった。 銀座かつかみでは、とんかつだけの一番高いコースが消費税込みで9900円、一般の塩で食べさせるとんかつ店では、定食で1000~2000円台。ホテルのレストランや日本料理などの高級料理店に比べたら安い。おそらくその敷居の低さが流行を広げ、外国人にも注目される存在に押し立てたのだろう。 最近は、世界各国から日本独自のグルメを楽しみに来る観光客は多いが、とんかつは、豚肉の禁忌がない地域の人たちにとっては、親しみやすい料理なのではないか。何しろ、欧米人にとっては自分たちが元祖なのだし、揚げ物文化は世界中にある。そのうえ、日本独自のサクサクへのこだわり、ブランド豚は魅力的だろう。ヨーロッパでも日本食がブームの国は多いので、回転ずしがそうだったように、とんかつもカスタマイズされて今後も各国で進化していくのではないだろうか。 とんかつは、家庭でも作って食べられる料理である。しっかり肉を叩いて柔らかくし、衣をしっかりつけてしばらく置き、中温の油でじっくり揚げる。完成品は、岩塩ほか好きな調味料をつけてカスタマイズして食べよう。自宅で作るなら自由にできるので、店では出ない新しい味つけを発掘できるかもしれない。そこまで愛され進化したとんかつを、今更「和食ではない」、と主張する人はほぼいないのではないだろうか? 画像提供:Adobe Stock
執筆者情報
■阿古真理 作家・生活史研究家。1968年、兵庫県生まれ。食や暮らし、女性の生き方を中心に生活史と現在のトレンドを執筆する。主な著書に『大胆推理!ケンミン食のなぜ』・『家事は大変って気づきましたか?』(共に亜紀書房)、『ラクしておいしい令和のごはん革命』(主婦の友社)、『日本外食全史』(亜紀書房)、『料理に対する「ねばならない」を捨てたら、うつの自分を受け入れられた。』(幻冬舎)、『料理は女の義務ですか』・『小林カツ代と栗原はるみ』(共に新潮新書)など。 阿古真理さんの理想のキッチンに関するプロジェクトはご自身のnoteやYoutubeでもコンテンツを更新中です。 note https://note.com/acomari/m/m9283abc44cf1 YouTube https://www.youtube.com/@acomedia1919