『若草物語』堀田真由はハッピーエンドなのだが…男友達視点だと残酷すぎるバッドエンドのモヤモヤ【ネタバレあり】
主人公視点では大団円のハッピーエンドなのだが、幼馴染みの男友達視点だと、残酷すぎるバッドエンドに見えてしかたない。 堀田真由主演で12月15日(日)に最終話(第10話)が放送されて完結した『若草物語―恋する姉妹と恋せぬ私―』(日本テレビ系)のことだ。 アメリカの小説『若草物語』を原作としつつ、令和の日本を舞台に斬新なアレンジを加えて物議を醸してきた本作。公式サイトには《2024年。果たして幸せに恋愛は必要か? きまじめ長女、がむしゃら次女、おっとり三女、したたか四女。四者四様の幸せを追いかける社会派シスターフッドコメディー》と謳われていた。 ■【ネタバレあり】親友のプロポーズを断った主人公は? 堀田が演じる主人公は新人脚本家の次女・涼。恋も結婚もしないと誓っており、恋愛はたくさんしたほうがいいとか、女は結婚したほうが幸せになれるとか、そういった恋愛至上主義的な旧態依然とした価値観を毛嫌いしているタイプ。 そんな涼にずっと昔から片想いしていたのが、小中高と同じ学校に通っていた幼馴染の律(一ノ瀬颯)。第9話で律がとうとう想いを打ち明けてプロポーズするも、涼は「お願い、友達でいて」と断ってしまった。 最終話序盤では、関係が気まずくなってしまった2人が久しぶりに顔を合わせるも、律が「2人で会ったり、話したりするの、これで最後にして」と冷たく言い放ち、友情が終わってしまうシーンが描かれる。 けれど、ネタバレとなるが、最終話終盤で涼が「恋愛も結婚も、私にとっては大事なことじゃない。でも、律との友情がない生き方は、私には考えられない。」「もう一度、友達になってもらえませんか?」と伝え、律がそれを受け入れて友情が復活。性差を越えた親友に戻り “ハッピーエンド” という着地だった。 ■男側の価値観が犠牲になって成り立ったハッピーエンド 主人公・涼は最後まで自分の価値観を押し通し、律とは恋愛・結婚はせずに親友関係に戻るという、自分の望む関係性を手に入れた。 しかし、それは律の価値観の犠牲のうえに成り立っている。 律目線では自身の恋愛感情を強引に封殺されたバッドエンドなのだが、それを主人公目線でハッピーエンドとして描くという、ある意味、かなり恐ろしい結末になっていた。 一応、説明しておくと、最終的には律も納得のうえで親友関係に戻っているし、最後はお互いに屈託のない笑顔を見せあえるようになっていたので、律にとって不幸なラストだったというわけではない。 ただ、律の価値観(恋愛観・人生観)としては、涼と恋人になって結婚することを望んでいたのは間違いないし、それが叶わなかったため、涼を拒絶して距離を置くほど苦しんでいたことも事実。 最後は律自身が納得して選んだ関係性とは言え、それは彼が自分の価値観を折り曲げて、大好きな相手の価値観に合わせた結末だったのである。 ■恋愛における弱肉強食をまざまざと見せつけられた結末 誤解してもらいたくないのだが、涼の言動や選択を責めているわけではない。 何が言いたいのかと言うと、多様な価値観が共存していくことは、言うは易(やす)く行うは難(かた)しだということ。そして、価値観が対立する相手と一緒にいたい場合、弱者が強者に屈する形になりやすい。 恋愛において強者とは追われる側であり、弱者とは追う側である。 涼と律の恋愛観・人生観は完全に異なっており、親友でいたい涼と結婚したい律の主張は正面衝突していた。そして、恋愛における弱肉強食の構造で、強者が弱者の価値観をねじ伏せて、自分の価値観を押し通したわけだ。 もちろん、律には友達に戻りたいという涼のお願いを突っぱねて、一生距離を置き続けるという選択肢もあったが、そこは惚れた弱み。結婚できないのであれば親友として近くにいようという妥協案に落ち着いたということだろう。 ――とはいえ、そもそも恋愛なんてそんなもの。とても残酷な一面を持ち合わせているものなのだ。 繰り返すが、主人公のことを責めたいわけではない。けれど、強者・涼は自分の価値観を貫く人生が送れて、弱者・律は価値観を折り曲げて好きな人に合わせたという、モヤモヤが残るハッピーエンドだったこともまた事実なのである。 ●堺屋大地 恋愛をロジカルに分析する恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー。これまで『女子SPA!』『スゴ得』『IN LIFE』などで恋愛コラムを連載。現在は『文春オンライン』『現代ビジネス』『集英社オンライン』『日刊SPA!』などに寄稿中