見逃し再生が“月９最高”の『海のはじまり』有村架純が魅せる“目の演技”…「その裏にあるもの」
社会現象を巻き起こしたドラマ『silent』（フジテレビ系）のスタッフが再集結した７月期の月９ドラマ『海のはじまり』（フジテレビ系）。 【写真あり】有村架純「焼肉店で佐藤健と見せた」圧倒的な笑顔 “親子の愛”を通して描かれる切ない“家族”の物語に涙腺崩壊する視聴者が続出。「見逃し再生数」でも月９ドラマの歴代記録を打ち立て、大きな反響を呼んでいる。 「このドラマは、主人公の月岡夏（目黒蓮）が、大学時代の恋人・南雲水季（古川琴音）の葬儀で、水季の母（大竹しのぶ）から、娘・海（泉谷星奈）の存在を知らされ、戸惑いながらも親子の絆を深めていく物語。 本編中にモノローグやナレーションを使うことなく、説明的なセリフも見事に削ぎ落としている。それだけに登場人物の思いが胸に沁みる。そんな中、夏の恋人・百瀬弥生を演じる有村架純の演技には目を見張るばかりです」（制作会社プロデューサー） 有村は８年前に『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう（いつ恋）』（フジテレビ系）で月９初主演。再び有村とタッグを組む村瀬健プロデューサーは、当時を振り返り、 「どんなに苦しい状況にあっても、前向きにひたむきに生きる音（有村）を優しさや温かさだけでなく、弱さももろさを含めて見事に演じきった」 と語り、彼女の魅力について 「可憐さの中にある凛とした強さを、変わらず持ち続けている」 と評している。 しかし女優・有村架純の魅力は、それだけではない。 例えば、第２話。子供を中絶することに同意したにもかかわらず、水季が海を産んでいた事実を今まで知らなかったと、夏が弥生に打ち明けるシーンがある。その場面で、 「正直ホッとした。生きててくれたんだなって、自分が殺したと思ってたから」 と呟く夏。その言葉を聞き、いたたまれなくなってトイレに入り、崩れるように座り込み、弥生は深い哀しみをたたえる目から一筋の涙を流す。 しかしその涙は、最愛の人に隠し子がいたことから流した涙ではない。同じ時期に、弥生も別の男性との間にできた子供を中絶していた。そうした事実が、やがて回想シーンの中で明らかになる。 つまり弥生の流した涙は、自身の中で蓋をしていた感情の発露だったことを、視聴者はこの時初めて思い知らされる。 しかし、その事実を夏たちには打ち明けていない。重い十字架を背負わされた弥生の悲しみは、子供を産んだ水希と産まなかった弥生の対比の中で、さらに増幅されていく。 「第４話では子供を中絶した後、自宅の風呂掃除をしていて浴槽で滑ってしまい、思わずお腹をかばってしまう。刹那、弥生は母親になれなかった哀しみから、涙を流す。 その時見せる、絶望の底に沈んだ弥生の目。涙をかき消すように、頭からシャワーを浴びながら号泣する２分間にも及ぶ有村の演技には、心をゆり動かされる視聴者からの声が殺到しています」（制作会社ディレクター） そして７月29日に放送された第５話。行きつけの美容室で、自分へのご褒美でカラーリングとトリートメントを希望する弥生。すると隣に別れた夫と子供の面会中に、久々に美容室に訪れたシングルマザーが座る。彼女は 「お金はかかるから」 と、伸びて枝毛が目立つ髪のカットだけを申し訳なさそうにリクエストする。その様子を鏡越しに見る弥生は、さまざまな思いが交錯して虚ろな目をする。“目は口ほどに物を言う”と言うが、有村架純は一体どうやってこの“目”を手に入れたのか。 「有村はデビュー当時、恩師でもある廣木隆一監督から『お芝居は引き算だから、それが一番人に伝わる。気持ちがあれば、悲しそうな表情や嬉しそうな表情を作らなくても、目から伝わる。とにかく余計なことをするな』と言われ、その教えを肝に命じてきました。『いつ恋』の脚本を手掛けた坂元裕二さんも『本当にただそこにいて、感情だけが伝わってきた』と有村の演技を評していました」(前出・ディレクター) そんな有村が廣木監督と３度タッグを組み、目黒蓮と初共演を果たしたのが、映画『月の満ち欠け』（’22年）である。今作で有村が演じる正木瑠璃は、ミステリアスな大人の女性でありながら、チャーミングな面も併せ持つ魅惑的なヒロイン。そんな瑠璃の深い哀しみに満ちた目が、大勢の観客の心を鷲掴みにするシーンがある。 「寒椿が群生する川の岸辺のベンチで、抱いた子猫と戯れる瑠璃。その時の瑠璃の目。痛いほど虚無感に溢れるその目を思い出すと、今でも心が震えます。そんな目をする瑠璃に『笑顔が見られるなら、どんなことでもします』と思いを告げる哲彦（目黒）。 この言葉から端を発する逃避行がやがて二人を悲劇へと駆り立てていく。時にルナティックな光を放つ彼女の目は、今や女優・有村架純の最大の武器ではないでしょうか……」（前出・プロデューサー） 『海のはじまり』もいよいよ後半戦。彼女の怪しくも美しく輝く“瞳”が今後、物語をどこに誘っていくのか。恐ろしくもあるが、見届けていきたいーー。 文：島右近（放送作家・映像プロデューサー）
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