インドの高額紙幣廃止から1年が経過 庶民のマーケットもカード社会に
インドの首都デリーに住んでいた時、借りていたアパートの近くに、ラジパット・ナガールと呼ばれる大きな商店街があった。衣類から食材、日用品から家電まで、生活するのに必要なものは全てそろうほどの様々な店が集まり、町中から訪れる人々でいつも賑わっていた。 こんな庶民のマーケットで、貨幣経済の変化が起こりつつあるという。 モディ首相は2016年、予告なしにいきなり最高額紙幣の1000ルピーと500ルピー札の廃止し、新札を発行すると宣言して、国内を混乱に陥れた。インドでは大小問わず売買は現金取引が主流だ。不動産など高額なものも現金が多く使われるが、これは政府にとって不都合が多い。銀行を通さず、記録に残らない現金取引で脱税が頻発するからだ。さらに高額紙幣には偽造が多い。紙幣を一新することによって、こうしたブラックマネーを撲滅するのが首相の狙いだった。
ラジパット・ナガールでも、旧高額紙幣が使えなくなって、特に宝石店など高価な商品を扱う店で数か月間客足が遠のいた。ようやく今春あたりになって、人々や店がクレジットやデビッドカード、マネートランスファーでの支払いに慣れていくにつれて、賑わいが戻ってきたという。 現金主義だったインドの消費者たちも、これを機会に徐々に変わっていくのだろうか。人口12億のこの国がクレジットカード社会になったら、カード会社はボロ儲け。“モディ首相様様”といったところだ。 (2014年9月撮影・文:高橋邦典) ※この記事はフォトジャーナル<世界の市場の風景>- 高橋邦典 第53回」の一部を抜粋したものです。