稲本潤一&今野泰幸――日本を代表するボランチふたりはなぜ、地域リーグの南葛SC入りを決めたのか
ただ、それは加入したあとの話で、南葛を選んだのは、それ以外にほぼ選択肢がなかったから、というのが正直な理由です。2021年シーズンを終えた時にはもう1年、ジュビロ磐田でプレーしたいと思っていたというか。J1に昇格もできたし、カップ戦もあって試合数も増えるし、ってことも想像しながらもう一度、J1のステージを戦えることを楽しみにしていたんです。 でも、契約満了を告げられてしまい......まだまだ現役を続けるつもりでいたので、かなり焦りました。それでも、何かしらオファーはあるでしょと思っていたら、Jクラブからのオファーはひとつもなかった。 稲本(Jクラブは)年々、30歳オーバーの選手に厳しくなってるよな。当時何歳だった? 今野 38歳。30代の選手に......ましてや40歳に近づいている選手への風当たりが厳しくなっているのはわかっていたけど、こんなにも引きがないの!? と驚くくらい不人気でした(笑)。でも、自分としては身体的にも動ける自信があったし、まだまだ戦えるって情熱もあったからどうしようか、となって。 とりあえず、契約満了になったことをジュビロにリリースしてもらったんです。そしたら、南葛SCとクリアソン新宿(JFL)の関係者の方が直に連絡をくださって。迷いに迷った結果、南葛を選びました。その時点でチームを選べる立場にはなかったので、カテゴリーは気にしていなかったですが、最終的には元プロサッカー選手が何人かいることや、イナさんも入るんじゃないかって噂を聞いていたことが決め手になりました。 ――今野選手はガンバ大阪時代、よく40歳まで現役を続けたいとおっしゃっていました。そういう数字も現役を続けるうえでの指標になったのでしょうか。 今野 えっ!? そうでした? ぜんぜん覚えてない! 僕、そういう目標は結構、その時々でコロコロ変わっちゃうから(笑)。でも、そのタイミングでは引退の「い」の字も想像していなかったです。それに、引退後の生活もまったく想像できなかったので、サッカー選手でいられるのなら、どこででもプレーするつもりでした。 稲本 今ちゃんの加入を聞いたのは、僕が南葛入りを決めたあとやったけど、結果的に今ちゃんをはじめ、クニ(関口訓充)らが加わってくれたのはうれしかったよ。実際、チームメイトになって今年で3シーズン目やけど、全然動けるし、チームのプラスにもなってくれていますしね。さっき、今ちゃんは僕を立ててくれたけど、今ちゃんのほうが僕より代表キャップ数も多いわけで、そうやって積み上げてきた経験値は間違いなく自信を持っていいものだと思う。 今野 いやいや、イナさん、僕、日本代表では1分くらいしかピッチに立っていない試合もめちゃ多いので、キャップ数はあてになんないです! 岡田武史監督が北海道コンサドーレ札幌時代からのよしみで気を遣ってくれたのか、それで試合数を稼げただけです。