フランス人が「日本の芸能」を見て「衝撃の感想」を漏らした理由…観客が「日本人らしいわね」と言った深い意味
乾燥と寒さに悩まされた
一方で困ったこともあった。さらに観客に参加してもらうため、傘回しの挑戦コーナーを作った。 これはたまに日本でもやっていて、参加してくれた方にはいつも千社札や手ぬぐいといった記念品を渡しているのだが、サウジアラビアでは景品が出ることがわかると、それだけを目当てに人がわらわらと寄ってくるのだ。 1日2~3回の公演をすると、景品をもらいたいがために次の公演まで残っていて、自分を指名しろとずっとアピールしてくる。それだけなら人集めには良いのだが、その人を指名して舞台に上げると、その後のチャレンジはまったく真剣にやらない。 さらに困ったことに、景品が出る芸が終わると観客がごっそりいなくなるので、途中から一切景品を渡すのをやめてしまった。お金持ちの国の印象があったので、これにはかなり驚いた。 ただサウジアラビアでは日本の人気が高く、日本からの物ならなんでももらいたいという、彼らの愛情の証でもあったらしい。 サウジアラビアといえば、灼熱の太陽というイメージの国だが、会場は震えるほど寒い。外が暑い分、室内はどこでもキンキンにクーラーが効いているからだ。 持って行った夏の着物だと寒すぎて震えっぱなしの私をよそに、現地の男性は半そでで動き回っていた。サウジアラビア人は暑さにも寒さにも強い。 想像以上の乾燥も私を困らせた。太神楽の道具は木や竹といった自然のものから作られているので、この乾燥が非常に影響を与える。 先ほどの五階茶碗の道具は、木を組み合わせてはめ込んでいる部分があるのだが、乾燥のために木が細くなって組み合わさらない。毎日道具を水につけて膨張させてから使ったりした。篠笛奏者も苦戦していて、音が割れるだけではなくて、笛も割れる危険があり、ヒヤヒヤものだった。 もう一度行きたい国は? と聞かれたら、間違いなくフランスと答える。あの頃はまだ芸人としても歩き始めたばかり。そして海外での舞台経験もなかった。 10年の時を経て自分がどれだけ成長したのか、あの頃よりももっと彼らの目の鱗をはがせるのか。衣装での美しいお辞儀からサウジアラビアでのコール&レスポンスまで、これまでの経験を総動員して彼らに「Bravo!! !」と叫ばせたい。 * ひきつづき、鏡味さんの記事は<「日本人ってキスするの?」…芸人がフランスで唖然とした「外国人から見た日本」衝撃のイメージ>からどうぞ
鏡味 味千代(太神楽師)