BYDのプレミアムブランド「ファン・チェン・バオ」が仕掛ける欧州市場攻略の切り札
BYDグループのプレミアムブランドが本格攻勢を開始
2024年4月16日、BYDのプレミアムサブブランド「ファン・チェン・バオ(Fang Cheng Bao:方程豹」が2024年後半から2025年にかけて発売する新型フラッグシップ「Bao 8」とその後、発売予定のコンセプトモデル2台を公開した。4月25日から開催される北京オートショー2024で一般公開されるという。 【写真】Sper9をはじめ方程豹の最新モデルを詳しく見る 「ファン・チェン・バオ(Fang Cheng Bao:方程豹)」は、2023年6月設立されたばかりのBYDのプレミアムサブブランドだ。BYDグループにおいて高級オフロード車を中心に展開するブランドとされる。BYDのポートフォリオでは、ヤンワン(YangWang)>デンツァ(Denza)>ファン・チェン・バオという漠然とした序列はあるようだが、主に価格レンジの目安のようなもので明確な基準はない。 23年11月から第一弾となるPHEVモデルの「Bao5(豹5:Leopard 5)」が正式発売されている。現地価格は28.98万元(約618万円)~35.28万元(約712万円)と、想定ライバル車(トヨタランドクルーザー250やランドローバーディスカバリースポーツ)より安価ながら品質は勝るとも劣らないと言われている。 ラダーフレーム構造をベースに、30kWhのBYDブレードバッテリーを搭載した独自のアーキテクチャーを採用する。これに1.5Lターボエンジンと前後モーターを組み合わせて、システム総出力505kW(約680ps)/最大トルク760Nmを誇る。0→100km/h加速は4.8秒、航続距離は1200km(CLTC)だ。 まだ生まれて間もない新進のブランドが、今年後半から2025年にかけて発売する3モデルを一堂に集めて公開したのだから話題にならないはずはない。
北京モーターショー2024で全貌が明らかに
【Bao8:Bao5の3列シート&フラッグシップモデル】 まずは2024年の第3四半期、つまりあと数カ月後には販売がスタートするフラッグシップモデル「Bao8」。昨年8月に開催された成都モーターショー2023にコンセプトモデル「Super8」が出展されていたが、その市販モデルが公開された。 ベースになったのは上述のBao5で、同じくPHEVだ。パワートレーンもBao5と共用しており、出力も同じ。詳細は不明ながら、全長は5mを超えるようだ。ルーフに3個のLiDERが確認できることから、自動運転レベル3を実現している可能性もある。 【Super3(Bao3):やや小ぶりなフル電動エントリーモデル】 Bao8に続いて発売されるのが、若年層をターゲットにしたエントリーモデルの「Bao3」。公開されたのはそのコンセプトモデル「Super3」であるが、ルーフに小型ドローン用の“駐機場”を設けるなど、遊び心も忘れていないが市販時には外されるだろう。 上位モデルのBao8/BaoはPHEVだが、Bao3はフル電動のEVとなる。現地メディアはその価格帯を20万元前後(約426万円)~と予想しているようだ。 【Super9:ブランド初のフル電動スポーツカーを暗示】 ファン・チェン・バオのもつもうひとつの顔が、スポーツカーブランドであること。現在はSUV/クロカン系プレミアムカーブランドを前面に押し出しているが、2025年以降にはEVスポーツカーを少なくとも2~3台を揃える計画だ。 公開された「Super9」は、早ければ2025年に発売されるブランド初のEVスポーツカーを暗示しているという。デザインを手掛けたのはBYDグループのチーフデザイナーであり、ランボルギーニやアウディで辣腕を振るったヴォルフガング・エッガー氏。シザードアを備えたスピードスターのデザインは、レトロな要素と未来感を巧みに盛り込んでいる。ボディはカーボンモノコック。市販時にどこまで再現されるのかは不明だが、すでに完成度は相当高い。1年後? の発表に大いに期待したい。
BYDが目論む欧州プレミアム市場の開拓
BYDは、デンツァ(Denza)、ヤンワン(YangWang)、そしてファン・チェン・バオという3つのプレミアムサブブランドを擁するまでに成長した。 一方で、すでに中国国内のNEV(新エネルギー車:EV、PHEV、FCEV)市場は飽和状態にあるとも言われる。かつての日本車メーカー同様、今後は海外に市場を求めていかざるを得ない。BYDブランドに加え、3つのプレミアムサブブランドが、海外市場、なかでも重視していると思われる欧州市場で受け入れられるかどうか。欧州プレミアムブランドの反攻も含め、今後の動向に注目しておきたい。