ひとシネマ執筆陣が選んだ〝2024年上半期の5本〟:今を捉える視点に魅了 鈴木隆
2024年も半分が過ぎ、1年の折り返し点でちょっと立ち止まって、今年の秀作、話題作をおさらい。上半期に映画館や配信で公開された多くの作品の中から、ひとシネマ執筆陣がお勧めの5本を選んだ。 【写真】「ゴースト・トロピック」 バス・ドゥボス監督インタビュー:「(移民が)人間としてどんな物語を持っているかに着眼したかった」 ・「悪は存在しない」(濱口竜介監督) ・「人間の境界」(アグニエシュカ・ホランド監督) ・「ゴースト・トロピック」(バス・ドゥボス監督) ・「パスト ライブス/再会」(セリーヌ・ソン監督) ・「燈火(ネオン)は消えず」(アナスタシア・ツァン監督)
破天荒なパワーを楽しみたい
上半期に気に入った作品を並べてみたら、優に20本を超えた。邦画も洋画も時々の時代や場所、人を映す作品ばかり。目の前や周囲で起きていることも、遠い地での出来事でも、今を的確にとらえる視点に魅了された。使い古された「社会派」という範疇(はんちゅう)など大きく超え、ジャンルなど問わない。 もう一つ気にかけたいのは、学生の頃にわけも分からずひたすら見ていた「この映画って何?」「理解できない」といったたぐいの作品。映画は何でもあり。観客の好みより作り手の意志や思いが先に立つ作品の、パワーを楽しみたい。ウェルメードな映画も結構だが、やたらに目につき食傷気味。不穏だろうが観客を困惑させようがおかまいなし、セオリーなど知らぬ存ぜぬで価値観や常識を覆し、余白だらけの映画を大歓迎。アート系とは限らない。昨今、希少だからこそ余計にひいき目に見てしまう。 さて下半期。そんな映画との出会いに期待している。公開に先んじて、「お母さんが一緒」「ナミビアの砂漠」「ラストマイル」など、作り手の思い、受け取りました。
映画記者 鈴木隆