歌は人の心をつなぐ糸【山本浩之アナコラム】
【ヤマヒロのぴかッと金曜日】 ♪悲しみのない自由な空へ 翼はためかせ行きたい、、、 不朽の名曲『翼をください』の一節である。 赤い鳥時代からずっとこの曲を歌い続けてきた後藤悦治郎、平山泰代夫妻のフォークデュオ、紙ふうせんは結成して今年で50周年。同時に、結婚50年の金婚式を迎えた2人のコンサート「紙ふうせんリサイタル~なつかしい未来~vol.17」が今月14日、兵庫県立芸術文化センターで催された。 自然体で肩の凝らない2人のステージングは、まるでホームパーティーに招かれたよう。おちゃめでかわいらしい平山さんのツッコミをさらりと受け流す後藤さんもまた、まったりエエ感じに年を重ねはった関西のおっちゃん。2人は尼崎北高校の同級生。齢77歳になるというがとてもそんな風には見えない。特に平山さんの歌声は感嘆のひと言。声量、音域ともにまったく色あせず素晴らしかった。 アコースティックサウンドの落ち着いた雰囲気のなか『竹田の子守唄』をはじめとする日本や海外の伝承歌、ピーター・ポール&マリーのメドレーと続き、第2部では紙ふうせんの数々のナンバーを中心に2人は歌い続ける。そして、セットリスト最後は大ヒット曲『冬が来る前に』。10代の頃から何度も聴いたこの曲には特別な思いがあった。 今年春まで放送したMBSラジオ『茶屋町ヤマヒロ会議』の中にエンディングリクエストというコーナーがあり、リスナーの思い出の曲を私のギターの生演奏に合わせて歌ってくれていたのが、今年8月18日に48歳の若さで旅立ったお量こと、山本量子(関西で活躍されていたタレント)さん。病気療養のため何度も入退院を繰り返し、復帰するたびブランクを感じさせない軽妙なトークで番組を引っ張ってくれた。透き通った、素晴らしい声で『冬が来る前に』を披露してくれたのは2021年12月1日のことだ。 私たちは、ラジオ、音楽を通じて固い絆で結ばれた同志だった。どんな形であれ、歌は人と人とをつなぐ糸となる。もうこの世で会うことはできないが、口ずさむたびいつでもお量さんとの思い出に浸ることができるのだ。 紙ふうせんリサイタルのアンコール曲は冒頭の『翼をください』。後藤さんは「阪神大震災以降、この曲は被災地では皆さんを励ます歌であり、亡くなった方への鎮魂歌となった」とおっしゃった。 最後はみんなで大合唱。私は人目もはばからず誰よりも大きな声を張り上げさせてもらった。 ♪この大空に翼を広げ飛んでいきたいよー 悲しみのない自由な空へ翼はためかせ行きたい、、、(元関西テレビアナウンサー) ◆山本浩之(やまもと・ひろゆき) 1962年3月16日生まれ。大阪府出身。龍谷大学法学部卒業後、関西テレビにアナウンサーとして入社。スポーツ、情報、報道番組など幅広く活躍するが、2013年に退社。その後はフリーとなり、24年4月からMBSラジオで「ヤマヒロのぴかッとモーニング」(月~金曜日・8~10時)などを担当する。趣味は自家菜園。