沖縄に最南端ワイナリー誕生 野性味豊かな在来種ブドウで醸造
沖縄県恩納村で日本最南端のワイナリーが誕生した。暑い日が多い県内ではブドウ栽培が極めて少ないが、農業生産法人・沖縄葡萄(ぶどう)は、着色に優れる在来種をワイン用に栽培。これまでは外部に醸造を委託していたが製造免許を取得し、自社醸造を始める。ビールや泡盛に続く、沖縄の新しい酒として定着を目指す。 【画像】「リュウキュウガネブ」のワイン「涙(nada)」 栽培するのは、野生ブドウの一種で、亜熱帯の沖縄県内でも濃い黒に色づく「リュウキュウガネブ」。30アールに作付けしている。 手がけるのは法人代表の中田浩司さん(58)と妻の朋子さん(48)。ソムリエが本業の朋子さんは「ワインは渋味が少なく、野性味と酸味のある味わい。ゴーヤーチャンプルなど、だしで味付けする料理に合う」と話す。 朋子さんが以前、ワインの本に沖縄在来のブドウとして「リュウキュウガネブ」が紹介されているのを見たのがきっかけ。浩司さんは本業がシェフで、宿泊施設付きレストランを営む2人は「お客さんに地元ブドウのワインを飲んでもらいたい」と未経験ながら栽培への挑戦を決めた。 県内では苗木が見つからず、育種などに活用するため栽培していた香川大学農学部の望岡亮介教授から苗木を譲ってもらい、栽培を始めることができた。 2006年に作付け後、試行錯誤を重ね、10年に初のワインが完成。当初は関東のワイナリーに醸造を委託していた。村が今年、国家戦略特区の酒造法特例の「ワイン特区」に認められ、醸造免許取得要件が2キロリットルに下がったこと受け、夫妻は10月、免許を取得。年内にも自社醸造を始める。 村は「ブドウを使ったワイナリーとしては国内最南端」(農林水産課)としている。 国家戦略特区の酒造法特例は全国で3例目。県によると、以前から農家レストラン設置の特例などで同県は国家戦略特区として認定されており、今回の酒造法特例でも、同特区を活用したという。(岩瀬繁信)
特区認定292カ所
小規模な農家民宿や農園レストランでもワインなどが製造できるようにする構造改革特区法の酒税法特例の認定地域は、国税庁によると、北海道から鹿児島県まで292カ所に上る。従来の最低製造数量基準が適用されず、認定地域では大規模な業者ではない個人経営の農家でもワインなどが製造できる。 都道府県別で認定地域数が最も多いのは、長野の27。次いで秋田と高知の15、北海道と新潟の14、山形と福島の13と続く。 同特例のうち、農家民宿や農園レストランが「果実酒」「濁酒」を製造しようとする場合、同基準の年間6キロリットルを満たさなくても製造免許が付与される。自治体が指定する特産品を原料にした「果実酒」「リキュール」は同基準が2キロリットルに緩和される。国税庁は「小規模な個人経営でもワインやどぶろくの製造が可能になる」(酒税課)と説明する。
日本農業新聞