令和の子どもたちが「コイン収集」に熱中する理由 “貨幣系YouTuber”は大人気で、専門知識は「中学受験にも役立つ」
ネットにあふれる偽物には要注意
このように、コインのコレクションは敷居が高いようでいて、実はひとたび手を出すと止まらない、中毒性の高い趣味といえる。それに、子どもたちは誰もがコレクションするのが好きなのだ。のめり込む資質は十分にある。「ポケモンカードなどをコレクションする感覚で、コレクションを楽しんでいるのかもしれませんね」と、竹内さんが言う。 「ただ、気を付けてほしいのは偽物です。偽物を作る側は儲けたいと思って作るわけですから、銀貨の、発行枚数が少ない希少な年号のものに多く見られます。今の子どもたちはフリマサイトやネットオークションが身近かもしれませんが、珍しいコインがほしいと思って、ネットでポンと買ってしまうのは禁物です。できれば、コインは専門店で購入するのがベストです」 コインは簡単に真贋を見分けられるものもあれば、画像だけでは判別がつかない精巧なものも少なくない。「偽物がごくごく普通に見られるのがコインの世界。偽物を掴まないためにはコイン専門店の店頭や、貨幣博物館などで本物を見て目を養い、気をつけるようにしてほしいですね」と話す竹内さんだが、これはそのまま熟練のコレクターにも通じる普遍的なアドバイスなのだ。 それくらい、子どもたちの熱量が凄いということなのだろう。子どもたちは少ないお小遣いのなかからコインを買うため、熟慮に熟慮を重ねる。すると当然、熟練のコレクターなどと比べると、接客には時間がかかる。しかし、その熱量に応えるべく、専門店のスタッフも真剣に向き合っているとわかる。
コインを集めると歴史が得意になる
筆者はコレクターでありながら、「明治10年の旧20円金貨は発行枚数が数十枚しかない」などと漠然とは覚えているものの、恥ずかしいことに、すぐにパッと発行枚数の数字が出てこない。ところが、最近のコイン好きの子どもたちの知識量は凄いのだ。竹内さんらプロも舌を巻くほどだと言う。 「子どもたちはコインコレクター必読の書である『日本貨幣カタログ』を、隅から隅まで舐めるように読みますからね(笑)。発行枚数が少ない“特年”と呼ばれるコインの年号を覚えているのは基本で、発行枚数から価格まで頭に入っている子が珍しくありません。子どもの方が大人よりも純粋なので、数字を覚えるのは本当に得意なんでしょうね」 また、コインのコレクションは、学校の勉強でも結構役に立つ場面が多いのだ。竹内さんはこう話す。 「コインをコレクションしていると、少なくとも歴史の科目は得意になりますよ。貨幣制度は、その時代の政治や経済と密接に結びついているわけですからね。実際、難関中学の入試問題をコインが好きだったおかげで回答できた、という話は何件か聞いたことがあります。コインは手元で歴史のロマンを感じることができる趣味ですし、我々は子どもたちの夢を育てるお手伝いができればと思います」 筆者もコインコレクターの仲間が増えることは凄く嬉しいし、大歓迎だ。ぜひ、お子さんがコインに興味を持ったら、親御さんは一緒に専門店を訪れてほしい。
ライター・山内貴範 デイリー新潮編集部
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