藤井棋聖は史上最年少での永世称号資格獲得について「今後の活躍がより問われる」と謙虚に語った（提供：日本将棋連盟）

藤井聡太棋聖に山崎隆之八段が挑戦するヒューリック杯第95期棋聖戦（主催：産経新聞社、日本将棋連盟）は、藤井棋聖連勝で迎えた第３局が７月１日（月）に愛知県名古屋市の「亀岳林　万松寺」で行われました。対局の結果、相掛かりのねじり合いを100手で制した藤井棋聖が３連勝として防衛に成功。５連覇達成で永世棋聖の資格を獲得しました。 ■異世界 VS 勇者 山崎八段が用意した作戦は王道の先手番相掛かり。定跡通りの出だしののち、６筋の位を取ったのが「山崎ワールド」幕開けの合図でした。止めたばかりの角道を開けるだけに思い切った構想ですが、この世界では「玉は堅く囲うべき」という常識は通用しません。 軽いジャブを受けた藤井棋聖。やがて意を決したように右銀をぶつけたのがその答えでした。自玉は最低限の囲いでも相対的に敵玉のほうが薄く、駒を持ち合う展開になれば攻略しやすいと見ています。直後、角交換を桂で取り返した手が山崎八段の意表を突きました。 ■読みを信じて偉業達成 桂の活用を急いだ効果は数手後に現れます。中段飛車の大転回で飛車交換を実現したのがそれで、藤井棋聖の望み通りオープンな終盤戦が実現。相手の土俵に飛び込むのは怖いようでも、その指し手からは深い読みに基づく攻め合い一手勝ちの結論に自信を感じさせます。 勝負のすう勢は終盤の入り口、敵玉そばに放った焦点の歩により決しました。これを玉で取ると王手角取りが生じ、ほかの駒で取ると玉の逃げ道がふさがるため先手に処置はありません。この手を見た山崎八段は時折うつむいたり天井を見つめたりする様子を見せます。 山崎八段はその後も指し手を進めますが、その手つきに力はありませんでした。終局時刻は18時46分、最後は先手玉を即詰みに討ち取った藤井棋聖がシリーズ３勝０敗で防衛に成功、2020年に渡辺明棋聖（当時）から奪取して以来５連覇で永世称号資格を獲得しました。 水留啓（将棋情報局）