【緒方耕一】積極性と四球狙いの難しさ ソフトバンクに足りなかったものとは?
<日本生命セ・パ交流戦:ソフトバンク1-4阪神>◇16日◇みずほペイペイドーム 交流戦ではめっぽう強かったソフトバンクだが、近年は苦戦している。5年ぶりの優勝に向け、期待は大きく膨らんでいただろう。優勝を争う楽天とは、同じ得失点差で勝てばいいという条件。しかし、1時間早く試合開始となった楽天は、ソフトバンクの試合開始時に5点をリード。そして1回表には4点を失い、この時点で交流戦優勝は8-4で勝利する必要があった。 そのままの条件ならば、確かに苦しい戦いになる。ただし、やるべき戦術はシンプル。相手の阪神の先発は才木で、簡単には得点できない投手。初回の4得点をバックにし、阪神バッテリーは四球で走者をためないようにどんどんストライクゾーンで勝負してくるだろう。このバッテリー心理をどう受け取って攻撃していくのか? ここが勝負の分かれ道で、ソフトバンクが逆転の突破口を開くための糸口になると思っていた。 予想通りというか、先頭打者の周東は初球を打って一塁ベースに当たるラッキーな内野安打で出塁した。2番の今宮も初球の甘いスライダーを見逃したものの、2球目のフォークを打ってセンターフライ。積極的に打ちにいく姿勢は整っていたし、才木もガンガンとストライクゾーンに投げていく気配があった。 しかし3番の栗原を迎え、才木に力みが出た。あまりクイックが得意な方ではなく、栗原の2球目に盗塁され、3球のスライダーもボール。3ボールとなった。 得点差があるときは積極的な打撃でいいし、走者は得点圏にいる。通常の試合であれば、クリーンアップを務める栗原なら3ボールからでも打っていい。しかし、交流戦の優勝には大量得点が必要。このケースは狙い球を絞り、確実に打てる球以外は四球狙いが正解だろう。しかし栗原は見逃せば高めのボールになる真っすぐを打ってキャッチャーへのファウルフライに終わった。 パワーピッチャーの才木の真っすぐは威力がある。しかし、この場面で一番嫌なのはヒットではなく「無駄な四球」。真っすぐ狙いで打つなら、ストライクゾーンを小さくし、甘く入った真っすぐだけを狙うべきだった。 4回2死一塁からも7番の甲斐は打つ気満々で、フルカウントからファウルで粘った。しかし9球目の真っすぐは明らかに高めのボール(真っすぐ)に手を出してファウル。結局、10球目のど真ん中の真っすぐを打ち損じ、阪神バッテリーを助けてしまった。才木はいい投手であり、下位を打つ打者なら「四球狙い」という気持ちがあれば、結果は違っていたかもしれない。 終わってみれば、失点は初回に失った4点のみ。楽天は広島に3点を返されたため、5点を奪って勝てれば優勝できた。本来、ソフトバンクの四球数は多い。しかしこのような試合展開で、相手の嫌がる四球をどうもぎ取っていくか? ペナント優勝への課題にもなると思う。(日刊スポーツ評論家)