<恋するラグビー>ラグビーNZ代表「オールブラックス」にいる日本と縁ある若手とは?
ラグビーのニュージーランド(NZ)代表「オールブラックス」に日本と深い縁を持つ期待の若手選手がいる。 ◇「故郷に帰ってきた感じ」 「故郷に帰ってきたような感じがする。ここに帰ってきたことを、とてもうれしく思っています」 10月26日に横浜市の日産スタジアムで行われた日本代表との試合に64―19で快勝し、試合後の取材で、NZ代表のNO8(ナンバーエイト)として先発出場したウォレス・シティティ選手(22)は、勝利とは別の喜びを感じていた。 6歳から12歳の頃まで、日本に暮らした過去がある。当時を「大阪の弁天町に住んでいて、大阪YMCAインターナショナルスクールに通っていた」と振り返る。 父は、サモア代表で主将を務めた経験を持つセモ・シティティさん(50)。2003年ワールドカップ(W杯)オーストラリア大会では、1次リーグで優勝したイングランドを相手にトライを決めた。南半球最高峰リーグ・スーパーラグビーのハリケーンズ(NZ)などでプレーした後、大阪を拠点とするNTTドコモレッドハリケーンズ(現レッドハリケーンズ大阪)に選手やFWコーチとして所属した。 シティティ選手は今、スーパーラグビーのチーフス(NZ)でプレーしている。父とは異なる代表チームを選択したが、その理由は父からの言葉が影響している。 「父からは常に『ベストを目指せ』と言われている。今のラグビー界のベストといえばオールブラックス。それで(NZ代表を)目指すようになった」 ◇今年代表デビュー 今年、代表デビューしたばかりだ。日本戦が6キャップ目と経験は浅いが、日本戦では存在感を示した。前半には日本の5人の選手に対応されながら、ボールを保持し続けて大きく前進するなど、力強さとスピードの両面で世界基準を見せた。 「小さなミスでも(レベルの高いチームの試合では)かなり大きな影響を与える。自分の仕事に集中する大切さを学んだ」。オールブラックスの一員として試合を重ねるごとに成長している。 日本で暮らしていた頃の思い出は「焼き肉やラーメンを食べたこと」と話し、今でも忘れない。好きな日本語は「おいしい」。日本で育った若者が、世界屈指のタレント集団の中心選手になろうとしている。【高野裕士】