迷惑動画で営業損害・・・賠償請求して「賠償金」を勝ち取ったら税金はどうなる?
飲食店などで不適切な行為を撮影しSNSに投稿する、いわゆる「迷惑動画」が後を絶たない。2024年3月にはファミリーレストラン「ガスト」で、男性が備え付けの卓上調味料の容器を口の中に入れる動画がSNS上で拡散された。運営会社のすかいらーくレストランツでは、一時店舗の卓上調味料を撤去するなど対応に追われた。 迷惑行為の度合いによっては、訴訟を起こし、損害賠償を請求するケースもある。 2023年には、少年が回転寿司店「スシロー」で醤油ボトルの注ぎ口を舐めるほか、湯呑みの縁を舐めて戻すといった動画をSNSに投稿。親会社の株価は一時時価総額が160億円以上も下落し、スシローの運営会社は、少年側に6700万円の損害賠償を求めて提訴した。 その後、訴訟の調停が成立し、スシロー側は訴えを取り下げ。「責任は認めていただき、当社としても納得のできる相応の内容で和解をしております」とコメント。なお、和解金については明らかにしていない。 同様に、過去に迷惑画像で損害賠償請求を起こしたケースがある。2013年、蕎麦店の従業員が店の食洗機に横たわるなどした画像を投稿。ネットで炎上しクレームが相次ぐなど、店は倒産に追い込まれる事態に。店側は従業員に対して1385万円の損害賠償を求め提訴。最終的に200万円の支払いで和解が成立したという。 では、お店や会社を営む事業者がこのような賠償金や和解金を受け取った場合、または、支払うことになった場合、税金の扱いはどうなるのだろうか。税理士と弁護士の両資格を持つ菊地正志税理士に聞いた。 ●受け取った賠償金が「所得」に該当するかで、課税・非課税か判断される ーー企業や個人事業主が、何らかの損害を受けて、賠償金や和解金を受け取った場合、税金はかかるのでしょうか。 「賠償金や和解金を受け取った場合、その金額に税金がかかるかどうかは、受け取った金額が『所得』に該当するかで判断されます。 通常、事業活動に直接関連する損害(営業損失など)に対する賠償金は、事業所得の一部として課税対象となります。個人事業主の場合は、一時所得または雑所得に分類されることもあります。 一方で、純粋に財産に対する補填であったり、慰謝料に該当したりする場合は、非課税となるケースもあります。」 ーー賠償金や和解金を受け取った際の会計処理をお教えください。 「賠償金や和解金を受け取った際の会計処理は、売上の補填の意味合いであれば『売上』に準じた科目で処理されることもあります。ですが、『雑収入』として営業外収益や特別利益に計上することが多いように思います。 また、非課税である場合は、別表で『益金不算入』として処理します。」 ●損害賠償金の支払いは「経費」にできる? ーー逆に、会社が何らかの原因で損害賠償金を支払った場合、経費として計上することは可能でしょうか。 「損害賠償金の支払いが経費として計上できるかどうかは、その支出の性質によります。 事業活動に伴って発生した賠償金は『販売費及び一般管理費』として経費計上することが可能です。あるいは、『雑損失』として営業外費用か特別損失に計上できます。 しかし、反社会的な行為や明らかに事業目的から逸脱したものに対する賠償金は経費として認められない可能性が高いです。 その場合、別表で『損金不算入』として処理する必要があります。経理上は支出を計上しつつ、申告調整で損金不算入としなければなりません。 なお、個人事業主の場合、支払いが事業口座以外であれば処理の必要はありませんが、事業口座で支払った場合は『事業主貸』とします。 【取材協力税理士】 江戸川葛西税理士事務所 菊地 正志(きくち まさし) 税理士 弁護士、公認会計士準会員、宅地建物取引士。その豊富な知識と経験を駆使して、クライアントの多様なニーズに対応。税務申告ができる弁護士は希少な存在であり、企業の税務及び法務における専門的なサポートを強みとしている。 江戸川葛西相続法律事務所:https://ek-law.jp/ ※税理士事務所HPは準備中
弁護士ドットコムニュース編集部