掛布が語る「巨人、広島、阪神の光と影」
ペナントレースも残り30試合を切ってセ・リーグの優勝争いが混沌としている。首位の巨人と2位の広島が1ゲーム差。2位の広島と3位の阪神が1.5ゲーム差。2.5ゲーム差の中で3チームが激しい攻防を繰り広げている。では、どこのチームが、この混戦を抜け出してトップでゴールを切るのか。それぞれのチームを冷静に見ていると、3チーム共に光と影があることがわかる。 首位の巨人は、エース、菅野を欠き、本来、鉄板だったはずの中継ぎ、抑えのバランスが大きく崩れている。8月30、31日の横浜DeNAとの試合ではサードベースにボールが当たるというアンラッキーもあったが、その中継ぎ不安という影の部分が浮き出て、逆転敗戦につながった。 打線でも長野と高橋由が怪我で不在。そういう決してベストではない状態で首位をキープしているのが巨人の底力だろう。光の部分で言えば、8月に入って固定した4番・阿部に結果が伴い始めたこと。阿部のバッティングを見ていると、「ここ一番で俺が決めにいく」という激しい責任感と意思が見える。ただ、そういう強いスイングは、ぶれにもつながるし、相手バッテリーからすれば、インコースを使いやすい。予想される相手のマークに阿部がどう対応していくか。また内海が復活、白星を重ねているのも好材料だ。内海、菅野の2人が揃ったときに巨人のスパートに火がつく可能性がある。 上位3球団の中で、現在、最も怖い存在は広島だろう。エルドレッドの不振に引きずられることなく、野村監督は、「機動力」「つなぐ」という広島のスタイルにチームをしっかりと方向付けた。8月31日の中日戦で「菊池、丸、梵」と3、4、5番に並べたクリーンナップは象徴的だ。最後まであきらめないというチームメンタルの強さが、粘りというものに変わっている。また8月30日の中日戦で初勝利を挙げた新外国人のヒースや、代役出場した石原が活躍するなど、日替わりにヒーローが出てくるのも優勝するチームの条件。 広島の影の面は、エース、前田健太の完全復調がまだ不透明な部分だろう。8月22日の阪神戦では素晴らしい内容で完投勝利。阪神打線を封じ込めたが、次の28日のヤクルト戦では4回5失点と精彩を欠いた。この先、前田健が、「ひとつも負けない」という気概を持って投げることが、優勝へ、一歩も二歩も近づく条件になってくると思う。