ミュージシャン・小田和正が笑福亭鶴瓶に語る音楽への想い
ミュージシャン・小田和正。鈴木康博とオフコースを結成し、1970年4月にシングル「群衆の中で/陽はまた昇る」(当時は"ジ・オフ・コース")でデビュー。「秋の気配」「愛を止めないで」「さよなら」「生まれ来る子供たちのために」「Yes-No」「I LOVE YOU」「言葉にできない」「YES-YES-YES」など、多くのヒット曲を放ち、1982年には日本武道館で連続10日間公演を行うなど、1989年に解散するまで日本の音楽シーンをリードする存在だった。 【写真を見る】握手を交わす笑福亭鶴瓶と小田和正 グループでの活動と並行して、小田は1986年に初のソロシングル「1985」を、そしてアルバム「K.ODA」を発表。1989年にオフコースが解散すると、ソロ活動を本格化させた。ソロとしての大きなターニングポイントとなったのは1991年にリリースしたシングル「Oh Yeah!/ラブ・ストーリーは突然に」だった。高視聴率を記録したトレンディドラマ「東京ラブストーリー」の主題歌として「ラブ・ストーリーは突然に」が自身初のミリオンヒットとなり、250万枚を超えるセールスを記録した。「いつか どこかで」「風の坂道」「伝えたいことがあるんだ」「キラキラ」など、ソロとしても多くのヒット曲を生み出し、2002年4月にベスト・アルバム「自己ベスト」をリリースした。オフコース時代の楽曲も含めた15曲入りのこの作品は300万枚を超えるセールスを記録している。 まさにこのタイミングで放送された番組があった。2002年8月に放送された「音楽旅人~金沢市・石川厚生年金会館で録画~笑福亭鶴瓶・小田和正」だ。話術の達人・笑福亭鶴瓶が、最先端のアーティストの素顔に迫るトーク&ライブ番組で、鶴瓶が会場近くのファンと交流したり、コンサート直後にアーティストにインタビューを行ったりして、そのアーティストを丸裸にするというもの。この回では、「自己ベスト」を引っ提げてのツアーを展開している小田和正に焦点を当て、鶴瓶が金沢での公演を見て、小田にいろんな質問を投げかけたりしている。 「my home town」に始まり、「愛を止めないで」「夏の日」「さよなら」「ラブ・ストーリーは突然に」など、番組内で放送されている楽曲は、ベスト・オブ・ベストというものになっている。コンサート後の鶴瓶のインタビューとリンクさせ、小田は歌や音楽への想いを語っていく。鶴瓶が好きな曲にあげた「秋の気配」はこの日の公演では歌われなかったが、小田は「男のわがまま」を歌った曲だと語ったり、「老人のつぶやき」という曲を鶴瓶が持ち出すと、「もうずっと歌っていない」と言いながら、後日、別の日の公演でこの曲を小田は披露し、その様子もオンエアされている。 1998年に事故で入院するアクシデントがあったが、その時のことも振り返っており、ファンからの「生きていてくれて良かった」という言葉に、「そんなふうに思ってもらえてたんだ」と気づき、意識の変化があったと答えている。 また、尊敬する落語家、五代目・古今亭志ん生についても言及しており、50歳を過ぎてから花開いた志ん生の存在が心の支えになっていたと明かしている。「自己ベスト」は54歳8ヶ月でオリコンのアルバムランキング1位獲得最年長記録(当時)を更新。50代での活躍に関して、その言葉に思うところが感じられる。 2024年、9月20日に77歳の誕生日を迎えた小田は、変わらず精力的に活動を行なっている。「音楽旅人」が放送された頃と同じように、マイペースで、それでいて自身のベストをどんどん更新中。現在の活動にもつながる発言も多く見られるこの番組で、ミュージシャンとしての小田和正をより深く知ってもらいたい。 文=田中隆信
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