キム・ジョーンズがセレクト! 新星たちが着る「ニュールック」
ディオールのメンズ クリエイティブ ディレクターを務めるキム・ジョーンズが今季のコレクションの中から『GQ JAPAN』のために、フェイバリットルックをセレクト。窪塚愛流、市川團子、そして浅井小次郎の次世代を担う新星がフレッシュに纏う! 窪塚愛流、市川團子、浅井小次郎の写真を見る
次世代を代表する3人に訊いた、「東京ニュー・ジェントルマン」とは?
オリジナリティを追求し未来を模索していく 「モードやロック系、ストリートなど、ひとつのジャンルに偏ることなく、どんな服でも着こなせるモデルを目指しています」という浅井小次郎。自身のファッションポリシーは「ジャンルやカテゴリーにこだわらず、カッコいいと感じたものを着る。多くの情報や時代の空気も受け止めた上で、自分だけの表現をすることが大切。いつでも変わらない“核”となるものがあれば、それが個性になるはずです」 彼にとって、“東京ニュー・ジェントルマン”とは「人の往来が激しい日本のキャピタルシティ、東京の中で、自分のスタイルを築き、貫いている人」。それを象徴するアイテムのひとつはスーツだ。「ディオールのセットアップは、ポップな色の組み合わせ、現代的なシルエットとラグジュアリーなディテールのバランスが絶妙。そこに自分らしいポージングや表情を加えることが楽しかった」と語る。 彼の感性は、同世代の友人や古い映画の影響を受けながら磨かれてきた。 「例えば『シザーハンズ』にはポップな世界観の奥にある深いメッセージ性を感じました。『さらば青春の光』には、ロッカーズとモッズのプライドのぶつかり合いに感銘を受けたし、ファッション的にも学ぶことが多かった」。当時のファッションをそのままコピーするのではなく、そこから独自のスタイルに昇華させる。その姿勢は、DJ活動や絵、最近始めたというトラックメイキングにも共通する。 「何かにインスパイアされたとしても、アウトプットはオリジナルでありたい。DJや絵、音楽制作は、言葉で伝えきれないものを具現化する自己表現の一環ですが、まだ趣味の段階。今後、モデルと並行しながら何をしていくかを模索している状態です。でも、モデルを始めた時と同じように、1カ月後はどうなっているかわからない。そんな“可能性”を楽しんでいます」 浅井小次郎 モデル。2002年、東京都生まれ。大学のミスターコンテスト出場をきっかけにモデルを志し、同年からイマージュに所属。ブランド「THE END」2022年秋冬のルックとコンセプトムービーの主役を務めるなど、モデルとしてのキャリアを積む一方、DJや音楽制作も行う。 “紳士”とは生き様であり 内面から溢れ出るもの 「シャツにジュエリーをつける発想には正直くらいましたね。服から勢いをもらって楽しんで撮影に臨むことがで きました」という窪塚愛流。文章にするとまさに今の20歳だが、真摯に想いを伝えようとする姿が印象的だ。 「東京ニュー・ジェントルマンについて考えたとき、内面的なものが重要だと思いました。年齢性別に関係なく、自分の幸せを追求して人生を楽しむ人はカッコいい。周囲にはそんな人が多かったのですが、“紳士”とは生き様のことなのかなと。それから“愛の大きな人”も条件のひとつ。愛はたくさんの人を幸せにできるから」 5月公開の映画『ハピネス』では初めて主演を務める。俳優としても責任が増す中で、芝居にも内面が重要だと考える場面があったという。「ドラマで共演した渡部篤郎さんはいつも自然体で、普段の延長線上に芝居があった。その姿を見て、日頃から何を感じ、考えるかが大切なんだと思いました」 もし一人、目標とする人を挙げるなら? という質問には、迷うことなく「産んでくれた母」を挙げた。「周囲から意見されたり、偏見に晒された時期もありました。でも、自分がダサいと思う行動は選択しなかったし、堂々と人生を謳歌している。母は僕に生き方を教えてくれました」。もちろん、父・窪塚洋介も尊敬する人のひとり。「僕の感性は父から大きな影響を受けているし、すごく尊敬しています。でも、背中を追って同じ道を歩むのではなく、僕にしかできないことがあるなら、自分だけの景色を見てみたい」 昨年5月、幼い頃から暮らしてきた大阪を離れ、東京に拠点を移した。 「ひとり暮らしはすごく楽しい。料理もやってみると意外と美味しくできるし安く済みます。“できない”を“できる”に変換することが最近のテーマなんです。生活面も含めて、自分の成長につながっていくはずだから」 窪塚愛流 俳優。2003年、神奈川県生まれ。2018年『泣き虫しょったんの奇跡』でスクリーンデビュー。2021年から本格的に俳優活動を開始。最近の出演作にNTV「最高の教師 1年後、私は生徒に■された」など。映画『愛のゆくえ』が3月1日、初主演を務める映画『ハピネス』が5月17日に公開される。 尊敬する祖父と母の大きな背中を追いかける 「実は歌舞伎役者以外の方と撮影するのは初めて。しかも同世代なので、すごく嬉しいです」と明るく笑う。素顔はどこまでも自然体だが、舞台に上がれば、次世代の歌舞伎界を担う歌舞伎俳優、五代目 市川團子だ。 「本物の“ジェントルマン”は、いつの時代でも通用するもの。器が大きくて、優しく寡黙で勇敢な人」。そのイメージの背景には、祖父の二代目 市川猿翁と母がいる。 「よく母と、将来はどんな人になりたいかという話をするんです。高祖父にあたる初代の市川猿翁の『役者は人間修行』という言葉があり、役者としても一人の人間としても、“良き人”になりたい。僕のアイデンティティは歌舞伎の時事、特に祖父の『天翔ける心』『夢見る力』という言葉の影響が大きいのですが、日常の中で母から学んだこともとても多いです。歌舞伎役者としては祖父、人間としては母の背中を追っていきたい」。母親とは思春期に何度もぶつかった。しかし、どんな時でも、公私にわたって支えてくれる存在だ。「母は何事にも動じない人。器が大きいんです。だから“東京ニュー・ジェントルマン”という言葉から思い浮かんだのは祖父と母でした」 20歳を迎え、かつて初舞台を踏んだ「ヤマトタケル」で、今は主役を務めている。「これまでと変わらず、やるべきことをやる。歌舞伎は伝統に新しい風を取り入れながら400年間、革新を続けている演劇ですが、根底には不変の美意識があります。僕は普遍的なものを追求していきたい」 歌舞伎の面白さを尋ねると、キラキラと目を輝かせながら語り始めた。 「最初は敷居が高いように感じるかもしれないけれど、どんな服装でお越しいただいてもいいんです。とにかく一度見てほしい。ハマると奥が深くて、どこまでも深掘りできる。それは歌舞伎が日本一だと思っています」 市川團子 歌舞伎俳優。2004年、福岡県生まれ。2012年、8歳でスーパー歌舞伎『ヤマトタケル』 で初舞台を踏み、五代目 市川團子を名乗る。3月20日まで、新橋演舞場にて、初舞台を踏んだスーパー歌舞伎『ヤマトタケル』で、中村隼人とともに小碓命(ヤマトタケル)役として主演を務める。 PHOTOGRAPHS BY TAKASHI HOMMA HAIR STYLED BY KOTARO WORDS BY MIHO MATSUDA STYLED BY KENTARO TAKASUGI @ GQ