<春に挑む・’23センバツ・大分商>/下 守備編 苦い記憶 練習の原動力 /大分
2月中旬、全体練習後に、一塁手の羽田野颯未(かざみ)(2年)と二塁手で主将の大道蓮(れん)(同)が暗くなったグラウンドで守備の自主練習を始めた。走者の位置やアウトカウント、打球の速さ、送球の方向などさまざまな状況を想定して互いにノックを打ち合った。「捕球や送球が苦手だから練習している。九州大会の後から守備の自主練習をする人が増えた」。2人の練習は1時間半に及んだ。 2人には苦い記憶がある。決勝進出を逃した2022年秋の九州地区大会の長崎日大(長崎)戦。堅守が持ち味のチームに守備の乱れが生じ、相手にペースを握られた。 二回1死一塁、捕手の二宮力丸(2年)が相手の犠打を取りそこねて進塁を許し、続く打者に中前打を浴び、先制点を奪われた。三回にも先頭打者の内野ゴロを大道がはじき無死一塁に。3連打を浴び相手の追加点を許すきっかけになった。 大道は「相手は体格が良く、振りも鋭くて守っていてプレッシャーを感じた。緊張で体が硬くなった」と振り返る。右翼手の江口飛勇(同)は「連戦で疲れが出て、その中でエラーが出た。気持ちの切り替えがうまくできずに、ゲームを立て直せなかった」と唇をかんだ。 「さあこい」「もう1本」。立春も過ぎ、春の気配を感じるグラウンドには選手たちの大きな声が響く。正面の打球は素早く処理し、一、二塁間や三遊間の深い打球に飛び込む。内外野の連係プレー、送球後のフォローも丁寧に確認した。 那賀誠監督(55)は「甲子園ではとれるアウトを正確にとらなくてはいけない。アウトを重ねることで、相手と対等の勝負に持ち込める」と話す。 遊撃手の上田迅人(2年)は「センバツは緊張すると思う。それに向けて調子を上げたい」。大道は「打球を迎えず、前に出て捕球する『攻め』の守備をしようと呼びかけている。どんな球にも食らいつきアウトにしたい」と意気込んだ。【神山恵】