「大家さんと一線を越えた」カラテカ・矢部太郎 初の漫画が15万部突破
家族、あるときは恋人、またあるときは友達
風の強い日。よろけそうになる大家さんと手をつなぐ場面。 「手をつなぐのなんて久しぶり…ほほほ」と笑う大家さんとのやり取りにはほっこり。 「僕は、家が遠く本当のおばあちゃんと過ごした記憶があまりなくて。だから大家さんと新鮮に接していたのかなと。(アンジャッシュの)渡部(建)さんは『家族で、あるときは恋人、またあるときは友達みたいな関係だ』と言ってくれました。大家さんは僕にとっていろんな話をする友達、家族ですね」 時には、愛のあるダメ出しも。 「喫茶店で男女2人がいると、あの2人“あいびき”かしらとか言われます。あと“アベック”とか、“フィアンセ”とか。古い言葉を使うし、言葉遣いがきれい。『超おいしい、の“超”って言葉。最近の若い方はお使いになりますけど、そんな言葉は意味が分からないし、ガサツに聞こえるので、矢部さんには使ってほしくないわ』とダメ出しされることもあります」 しかし、大家さんの望む言葉を使い出したらキャラ変わっちゃうし、難しいところだと真剣に悩んでいる。 また時折、世界の見え方が自分と違うと感じることも。 「戦争の話もすごく最近のことのように話すので、大家さんと話していると時空がゆがむ、そんな感覚です。大家さんの好きな季節は夏、理由は戦争の番組をいっぱいしてくれるかららしく。僕らの感覚だと戦争なんて考えたくないし、見たくない。僕にない感覚ですごく印象に残っています」 同作はよく、ほっこりする漫画と言われるが、全体としては悲しさもある。人から見ると不思議でも、その人が感じている幸せ、それぞれに幸せがあるということを描きたかったと語る。
「契約書の甲と乙の関係超えとるで」
「救急車が家の近くに止まっていたり、雨戸が朝になっても閉まっていたら心配になります。あれ、なんだこの気持ちと。板尾(創路)さんには、『契約書の甲と乙の関係超えとるで』と言われました(笑)」 「大家さんが体調を崩して入院したときは(南海キャンディーズの)しずちゃんがお見舞いに行ってくれて。大家さん、しずちゃんを知らなくて、看護師さんに『テレビとかによく出てるすごく可愛らしい“すずちゃん”が来てた』って説明したみたいで、広瀬すずさんが来たという間違った情報が流れたことがありました」 思わずクスっとなるエピソードは止まらない。そのほかにも、大家さんの切ない初恋や、フィアンセのいない“僕”を心配する大家さんの“大家バカ”ぶりも描かれており、可愛らしい。 「相方の入江(慎也)くんは友達5000人とか言ってますけど、僕の友達は大家さん一人かな」 知らぬ間に大家さんで頭がいっぱいになっている“僕”に思わずほっこりさせられた。 (取材・文・写真:秋吉真由美)