東京駅や富岡製糸場を機に、いま脚光を浴びる日本の「赤煉瓦」建築とその魅力
テーマを「学び舎」とするなら、慶応義塾図書館(年寄)、立教大学本館(大関)、明治学院大学記念館(前頭)が三強か。機会があればぜひ訪れたいのが、上野の東京藝術大学赤レンガ館。東京に現存する最古(1号館)&ナンバー2(2号館)の煉瓦館だ。戦時中は外壁をモルタルで固められており、それを除いた際のノミの痕が不思議な風合いを醸す。 もう少し、横浜は桜木町・関内まで足を延ばせば、前出の赤レンガ倉庫と開港記念館(年寄。ジャックの塔)が徒歩圏内。前者は2002年に赤レンガパークとして整備され、みなとみらい観光の目玉となった。天候に恵まれれば、2号館横のワゴンで購入した「横濱馬車道あいす」などを舐めながらのんびり鑑賞したい。ただ、たまにトンビが食べ物を急襲する。ご注意。後者は1917年に開港50周年記念事業の寄付金をもとに建てられたもの。関東大震災で崩落したドーム屋根を1989年に復元。重要文化財に指定された。横浜市内でもうひとつ三役入りした保土ヶ谷区の西谷浄水場(関脇)は、相鉄線和田町駅からバス10分。緑の芝生に可愛らしく並ぶ赤煉瓦に、心が和む。
西日本では
西の横綱・年寄格も駆け足でめぐってみよう。まず、国内屈指の赤煉瓦建築都市とされる京都府の舞鶴。旧海軍舞鶴鎮守府一帯の赤煉瓦倉庫は横浜赤レンガ倉庫の宿命の(?)ライバルだ。2棟の横浜に対してこちらは展示館やイベントホール、カフェなど5棟+α。規模では負けていない。 奈良少年刑務所正門は西洋の城砦や防御壁をデフォルメしたデザイン。塀の煉瓦は受刑者自らが焼き、積み上げたものだそう。 「学び舎」では同志社大学の今出川キャンパス。米英独さまざまな建築様式が個性を競う煉瓦フリーク垂涎のキャンパスだ。 そして大阪には中之島公園のランドマーク、中央公会堂。2002年のリニューアル後も創建(1918年)当時の意匠を色濃く残す食堂や会議室に、非日常のタイムスリップ気分を味わえる。 舞鶴と並ぶ西の軍港・呉に近接する江田島の旧海軍兵学校はかつて英のダートマス、米のアナポリスと並ぶ「世界の三大兵学校」のひとつ。戦後は米軍の接収を経て自衛隊に引き継がれたため、再開発の波を逃れ、その威厳と美しさを現在に保つ。 さらに西へ向かえば、関門海峡を挟む下関と門司はどちらも赤煉瓦が似合う街。翌日の筋肉痛を覚悟して、1日で巡りたい。 「隠れキリシタンの里」と伝わる福岡県大刀洗町今村地区の今村天主堂は、1908年、信徒の労働奉仕により築かれた。双塔とステンドグラスが田園風景に美しく映える。
世界一有名な赤煉瓦建築「原爆ドーム」
最後に、「世界一有名な赤煉瓦建築」といえるのが広島の原爆ドーム。1915年に広島物産陳列館として建造された。骨組みだけを残す天井のドームは、人類の重い歴史を背負い続けている。市内には広島陸軍被服支廠倉庫など、旧陸軍の赤煉瓦施設が複数現存している。 *横浜市や京都府舞鶴市、愛知県半田市など日本各地で赤煉瓦建築物の保存と活用に取り組む団体のネットワーク。1991年設立。 (文責・武蔵インターナショナル)