（写真：東奥日報社）

　27日の衆院選投開票が1週間後に迫った。東奥日報などの情勢調査で接戦が報じられた青森県1、3区では、自民党陣営が裏金事件の逆風を乗り越えようと組織の引き締めや街頭活動に力を入れ、立憲民主党陣営は浮動票の取り込みに全力を挙げている。2区では立民県連の支援を受ける無所属候補らが、先行する自民候補を懸命に追う。 ▼津島氏、態勢強化急ぐ　升田氏、無党派に訴え／1区 　▽1区立候補者 津島　　淳　58　自民前（4） 升田世喜男　67　立民元（1） 斎藤　美緒　44　共産新 　「大事な基礎となる本来の支持層を固め切れていない」。自民党の津島淳候補は19日の取材に、序盤情勢で接戦と報じられた背景を「声をかけるべきところに、お願いが届いていない」と分析した。 　短期決戦で対応が後手に回り、選挙態勢の構築に手間取った。青森市議有志の支援市議団も19日にようやく本格始動。津島氏は結成式で、政治不信が招いた逆風を意識し「自民党をいま一度ぶっ壊す、その先頭に立つ」と強調してみせた。 　序盤は下北半島を中心に巡り、終盤もむつ市入りを検討中。陣営の一人は父の故・雄二元厚相の選挙戦を引き合いに「（旧1区時代は）青森で負けても五所川原などで取り返し、接戦を制してきた。今回はむつ下北で引き離して勝ちに行く」と戦略を語る。 　一方、津島氏と競り合う立憲民主党・升田世喜男候補の陣営。藤田誠選挙対策本部長は取材に「（序盤に回った）むつ下北では有権者の反応が良かった」と手応えを語る。街頭演説や支持者回りに加え、今後はミニ集会を増やす考えだ。「自民党政治を清算する戦い。地方の声を国会に届けられるのは升田氏しかいないと訴えるに尽きる」と話す。 　19日、青森市で活動した升田氏は、浜田地区での個人演説会で「今日からの日々がまた大事だ」と気を引き締め、支援を呼びかけた。終盤に向け大票田の同市の無党派層対策が重要なテーマになる－とし「選挙での言葉回しでなく、私から出る正直な言葉で共感を広げたい」と意気込む。 　共産党の斎藤美緒候補は、街頭演説の回数をさらに増やしていくほか、街頭で有権者の声を直接聞く「対話宣伝」の場を設ける。25日には志位和夫議長が再び来県し青森市で応援演説を行う予定だ。 ▼神田陣営、支持固め図る　松尾氏、自民批判票狙う／2区 　▽2区立候補者 金濱　　亨　36　国民新 神田　潤一　54　自民前（1） 久保　　将　70　共産新 松尾　和彦　61　無所属新 　東奥日報の序盤情勢報道を踏まえ、自民党・神田潤一候補の選対本部長・山田知県議は「思った以上に差が開いていない。自民党への逆風の中、これから無党派層を取り込むのは相当難しい」と表情を引き締めた。 　神田氏は経済や賃金アップ、農業、水産業、安全保障など地域ごとに話題を変えて演説を展開するが、どこに行っても語るのが「政治とカネ」の問題。「自民党を推してきた人に今回、改めて支持してもらうことが大事」と神田氏。中盤以降は街頭演説の一方、企業・団体回りや個人演説会を精力的に行い、支持層の票固めを加速させる。 　「先頭を走っている人の肩に手が届くかというところ」。立憲民主党県連の支持を受ける無所属・松尾和彦候補は19日、八戸市の街頭でこう述べ「皆さんの大事な一票をいただければ、必ずこの地域を変えていける」と訴えた。連日応援に立つ田名部匡代県連代表は、政見放送がないなどの制約がある無所属での立候補に触れ「相手は圧倒的な組織力で企業、業界団体を引き締めてくる。最後の最後まで松尾和彦の支援の輪を広げて」と呼びかけた。 　選対本部長の高畑紀子県議は今後の戦略を「自民党におきゅうを据えたいと考える人たちを取り込みたい。自民支持者が多い地域もくまなく回る」と語る。 　共産党の久保将候補は「地元八戸市のハマ側を中心に支持拡大を図りたい」と、着実な票固めを狙う。 　国民民主党の金濱亨候補は引き続き街頭演説と交流サイト（SNS）を駆使し票の掘り起こしを図る。 ▼木村氏、街頭演説増やす　岡田氏は大票田に重点／3区 　▽3区立候補者 木村　次郎　56　自民前（2） 岡田　華子　44　立民新 其田　寿一　38　無所属新 長坂　淳也　48　維新新 　自民党の木村次郎候補は第一声から一貫して政治資金収支報告書への不記載問題を陳謝し、引き続き地域の声を国政に届ける－との決意を強調してきた。 　序盤に選挙区を一巡した後は、1日当たりの街頭演説の回数を増やした。3区選対本部長の阿部広悦県議は「二度と過ちは起こさない、この選挙は（木村氏が）新しい一歩を踏み出す戦いなんだ、という本人の訴えを直接届けないと。最後はつじ立ち（街頭演説）だ」。各市町村組織を通じた支持拡大にも一層力を入れるが、知名度のある弁士の応援がなかなか決まらないことに「急がないと選挙戦が終わってしまう」と気をもむ関係者もいる。 　対する立憲民主党の岡田華子候補。陣営関係者は「接戦との実感はまだない。郡部を一通り回ったので、今後は大票田での街頭活動に力を入れる」と語り、弘前市など有権者数の多い地域で重点的に演説を行う方針だ。 　19日は五所川原市で田名部匡代県連代表と共に街頭に立った。津軽地方でも一定の知名度がある田名部氏が今後もこまめに3区内に入るほか、党の大物弁士の来弘も調整中だ。 　また、ネットを活用した選挙戦も展開。動画投稿サイトにドキュメンタリー風の動画を投稿して少子化対策や農業政策、女性の地位向上などを訴える。 　無所属の其田寿一候補は「14市町村の後援会支部を総動員し、支援を1村1村から広げていく」。選挙区を一巡した日本維新の会の長坂淳也候補は、今後は住宅地などに分け入って訴え、党の知名度向上も図る。