発足から56年目、国立・国定公園のリゾート「休暇村」の新たな挑戦
「休暇村」というリゾートホテルをご存じの方も多いだろう。かつて「国民休暇村」の名前で知られ、オールド世代には懐かしい響きがする国内のリゾート施設だが、若い世代や訪日外国人を取り込むべく昨年から新たな取り組みを始めた。新たなロゴマークを導入してイメージを刷新し、積極的なPRにも乗り出すなど新たな需要の掘り起こしにつなげようとしている。今年の3月末には環境省が民間企業と協力して、国立公園の魅力を世界に向けて発信し、国内外の利用者の拡大を図る「国立公園オフィシャルパートナーシッププログラム」のパートナー企業にも認定された。
休暇村は1961年に発足し、主に全国の国立・国定公園のエリア内でリゾートホテルを展開してきた。長く国の監督下にあったが、2004年に完全民営化した。 発足から56年目を迎え、これまで5700万人以上の利用実績があるが、利用者の中心層が60歳以上の年代に偏っていたため、ファミリー層や若い世代、そして訪日外国人客(インバウンド)などを新たな顧客層として取り込もうと工夫をこらしている。 2016年度は関西の人気施設「休暇村・紀州加太」(和歌山市)で、サービス内容に利用客が内容に不満な場合は、その評価に応じて返金も受けられる「ときめき保証プラン」と名付けた期間限定の企画を行った。 顧客からはシビアな評価を受けるため、サービスする側に「覚悟」が問われる企画だったが、半数以上の利用客に「満点」の評価を得た。ユニークなホスピタリティが評価された結果、企画が終了した今も、施設はフル稼働状態が続いているという。
休暇村協会では、紀州加太での試みが成功したことから、「休暇村・能登千里浜」(石川県羽咋市)でも同種の試みを実施。さらに他の地域での実施も検討している。 2017年度は新たな試みにも着手した。まず東京から最も近い休暇村・奥武蔵(埼玉県飯能市)について宿泊規模を倍増させる増築を行う。アクセスの便利な施設の規模を充実させることで、休暇村の一段の利用拡大や知名度アップにつなげる狙いがある。 さらに奈良県宇陀市に全国で38番目となる新たな休暇村施設の建設に向け、具体的な計画作りに着手する。「女人高野」として知られる室生寺がある宇陀市は、大阪市内や京都市内からも電車で1時間前後とアクセスがよく、地元には良質の温泉が出ており、奈良をめぐる観光の拠点としての利用が大いに期待できる。2021年度中のオープンを目指すという。 休暇村協会の中島都志明理事長は「奈良はこれまで休暇村の空白エリアでしたが、近江八幡(滋賀)、南淡路(兵庫)、そして紀州加太(和歌山)という人気のある施設の『ゴールデントライアングル』の中央に位置します。休暇村にとっても過去最大の投資になります。良質な宿泊施設に仕立てることができるように、今年は具体的なイメージを示せる段階までもってゆきたい」と抱負を語っている。 (3Nアソシエイツ)