ICT導入に頭悩ます 地域の中小建設業者 「便利なのは実感」としつつ「規模によっては採算合わず」 専用の3次元データを内製できない業者も
地域の中小建設事業者が情報通信技術(ICT)の導入に頭を悩ませている。建設業界は、残業時間の規制強化で人手不足が深刻化する「2024年問題」にも直面しており、ICT活用による生産性向上が不可欠にもかかわらず、導入コストや人材難から普及が遅れている。 【建設業の2024年問題】生産性向上へICT活用
「ICT建機を動かすまでの手間や負担が大きすぎる」。島根県西部の建設会社幹部が嘆息した。 4月に時間外労働の上限規制が始まったのを受け、地元自治体から受注した土木工事で初めてICT機能を備えたブルドーザーを活用した。ただ購入には数千万円規模の投資が必要なため、リースで間に合わせた。自動化効果などで施工の手際はよく、工期も短縮できたものの、機械を動かす3次元データの作成を外注したところ、全体の工事費が通常の2倍以上に上昇したという。 同社幹部は「便利なのは実感した」としつつ、「ある程度の規模の工事には導入したいが、規模によっては採算が合わず難しい」と語る。 人手不足の業界では、工事の効率化に向けICT導入が推進されてきた。各種図面や書類の電子化で事務作業の効率化は進んだ半面、通常のものより1・5~2倍高く、数百万から数千万円するICT建機の導入は進んでいない。現場で建機を動かすには、図面を立体的に構成する専用の3次元データも必要。多くの中小企業は内製化できずに外注しており、費用がかさむ問題がある。
さらに中小業者の受注機会が多い県や市町村発注の小規模工事での活用は採算性が高くはなく、普及が遅れる一因。国土交通省資料によると、ICT実施率(22年度)は国交省の直轄土木工事が87%に対し、都道府県・政令市の工事は21%と開きがある。 ハードルは高い半面、利用効果は大きい。毛利組(浜田市熱田町)はICTブルドーザー2台と3次元データの作成装置を導入。初期投資に計約3千万円、ソフトの更新などの維持管理費にも年間500万~600万円かかるものの、2割程度の時間削減と工事の品質向上効果がある。DX推進グループの村岡彰部長は「最初の負担は大きいが、長い目で見れば効率化につながる」と話した。 土江重機(出雲市国富町)は今秋、ICTの使い方を座学や実習で学べる施設を設立する。初期投資の問題などあるものの、土江光二社長は「現場の作業者に良さを知ってもらい、普及につなげたい」とした。