林陵平がレアル・マドリードCL優勝の理由を解説「勝負強さ、歴史の重み、監督の力も感じたシーズン」
【カウンターでビッグチャンス】 レアル・マドリードのビルドアップに対して、ドルトムントはあまり前からプレッシャーをかけずに、4-1-4-1のミドルブロックで構えた。前半はこれがうまくはまっていました。 レアル・マドリードとしては、ドルトムントがミドルゾーンにブロックを作ったので後ろでボールを持てるんですけど、そこから中盤のバルベルデやベリンガムになかなかボールを入れられなかった。 これはユリアン・ブラントが背中のバルベルデへのパスコースを消しながら前線にプレッシャーをかけたり、マルセル・ザビッツァーも同じくベリンガムへのコースを消しながら行くという、インサイドハーフふたりの振る舞いがすばらしかったからです。 あとは両ウイングのカリム・アデイェミとジェイドン・サンチョも、ブラントやザビッツァーが前に出た時には中を閉めていたんですよ。だから、やはりバルベルデとベリンガムへのパスコースが消されて、レアル・マドリードは外回りのパスになってしまいました。 ドルトムントはこうして4-1-4-1のブロックからいい守備ができた時に、ボールを奪った後カウンターに出て行けました。チャンスを作り出したのは、フンメルスがボールを保持して少し運んだところから、アデイェミが抜け出してGKと1対1を迎えた場面。その後も、高い位置でイアン・マートセンが奪い返してスルーパスを出し、ニクラス・フュルクルクの抜け出し。左足のシュートは右ポストに当たりました。 振り返ってみると、このふたつチャンスのどちらかを決めたかった。前半に関しては本当にドルトムントペースで、いい守備からいい攻撃という、狙いとしたプランで進められましたよね。
【レアル・マドリードは後半形を変えて流れを作る】 ――では、そこから後半はどのように変わったのでしょうか。 後半は、レアル・マドリードが機能不全になっていたので、どう変えてくるかがポイントでした。 クロースをアンカーにして、カマヴィンガを左のインサイドハーフ、右はバルベルデ。ベリンガムをトップ下に置くような形に変えてきましたね。攻撃時にはヴィニシウスが左側の幅を取り、ロドリゴが前半には誰もいなかったポジションの右側に行った。ベリンガムはゼロトップのような形で、相手の2ライン間に顔を出すようになり、それがうまく機能していたと思います。 守備時は4-1-4-1のような形になり、ドルトムント側もふたりのCBがフリーになってボールを持てるようになったんですけど、前線にボールを入れられなくなった。レアル・マドリード側の守備の改善です。前半の4-4-2から4-1-4-1の形で中盤の横幅を5人で守ることによって、中へのパスを入れにくくしましたよね。 それでもドルトムントは、アデイェミのクロスからフュルクルクが外に流れてヘディングシュートの決定機がありましたが、GKティボー・クルトワが防きました。前半の1対1の対応もそうですが、クルトワは本当に安定感があった。壁みたいで、「簡単にゴール入らないな」と感じさせた彼の活躍は、本当にすばらしかったです。 こうしてレアル・マドリードは、冷静にずっとゼロで抑えたのがすごく大きかった。そして後半形を変えてある程度流れを持ってきたなかで、クロースのコーナーキックから先制点を奪いました。 ニアサイドでダニエル・カルバハルがヘディングで決めましたが、カルバハルはその前に同じ形でヘディングシュートを1本打って外していました。つまり、ドルトムントとしては、再現性ある形で2度やられてしまった部分は痛かった。ただ、ここで数少ないチャンスをしっかり決めるあたり、もう本当に勝負強さです。「レアル・マドリードがレアル・マドリードである理由」というのが、すごくわかるシーンでした。 その後の2点目のところは、マートセンのミスになると思うんですが、フンメルスに横パスを出そうとした時に、シュロッターベックの後ろにいたベリンガムが見えなかったようですね。 その横パスをベリンガムがカットして左へ冷静に送り、ヴィニシウスがしっかり左に流し込むゴールだったんですが、このシュート、よく見たらダフっているんです。打ち損ねたというか、あれは狙ってはいないんですよ。それでも入るのがやっぱりスーパースターだと思うんですよね。 あの時間帯にあの形で冷静に決められるあたり、今のヴィニシウスは本当に乗ってるなと。どんなシーンでも1対1って緊張するものですけど、今の彼の決定力は本当に凄まじいなと感じさせるシーンでした。