譜久村聖が最後にメンバーと歌う「みかん」

　ユニットのコーナーが終わり「未来の太陽」で後半戦がスタート。「Say Yeah! –もっとミラクルナイト–」では山﨑・岡村の“ほまめい”が間奏の〈青春を謳歌する諸君に告ぐ　我々は完全に楽しんでいる〉という台詞パートを担当していたが、その言葉通りファンもメンバーもとにかく「楽しい！」という気持ちが伝わってくる。「OK YEAH!」ではメンバーが外周に登場。バズーカでサインボールを客席に撃ち込むというアリーナ公演ならではの演出も見られた。 　続くMCではメンバーそれぞれから今日の感想と譜久村への感謝が伝えられた。羽賀朱音は涙ながらに「明日からどう生きたらいいのか分からないです」と相変わらずの愛情を伝えると、譜久村は「げきおも」とあっさり返すいつものやりとりも見られた。この2人の掛け合いももう見ることができないと思うと寂しくなってくる。野中美希は譜久村への愛だけでなく、海外で配信を観ているファンに向けて、持ち前の流暢な英語で発信した。石田亜佑美は「もうモーニング娘。が好きすぎてどうしたらいいのかわかりません！」と愛を伝えた。石田は譜久村がリーダーになって最初のツアーは不安で号泣していたと振り返り、新体制に対して不安があったと明かし、「そんな私たちが堂々と横浜アリーナで堂々と“モーニング娘。です”と言えることが嬉しいです」と共に駆け抜けた譜久村への感謝を伝えた。 　続く本編ラストスパートは最新シングル「すっごいFEVER！」からスタート。〈青春全てをかけてること　あんた知ってるかい？〉と、譜久村だけでなくメンバー全員がグループに掛ける想いと重なるような歌詞は、卒業コンサートという場で聴くとより重い意味を感じる。ライブの定番曲「わがまま 気のまま 愛のジョーク」ではサビの最後に譜久村が歌い上げる〈愛されたい〉のパートが見どころの一つになっているが、それも今回で見納め。どれだけ中心にいるメンバーが卒業しても、そのパートを別のメンバーが歌い継ぎ成長を見せることもモーニング娘。の魅力だろう。これからこの楽曲がどのような顔を見せるのか楽しみだ。「みんなも一緒に歌いましょう！」という掛け声と共に披露された「涙ッチ」はメンバーだけでなくファンの大合唱もあり、しんみりしながらもどこか明るい雰囲気を残してメンバーがステージを降りて本編は終了した。 　止まらない“みずきコール”に応えて登場した譜久村が花道をまっすぐ歩きながら歌うのは「Neverending Shine」。今作は“モーニング娘。'23 feat. 譜久村聖”名義の楽曲で、途中まで1人で歌った譜久村が振り返り手を差し伸ばした先には残されたモーニング娘。のメンバーの姿が。「One・Two・Three (23 ver.)」を挟んだMCでは、譜久村とともに12年間を歩んだ同期であり、新リーダー就任が発表されている生田から感謝の言葉が伝えられた。前リーダー、道重さゆみが「もっと大きなステージに立ってね」と残して卒業したことを振り返り、それを譜久村が達成していることが嬉しいと話した。「同期に恵まれたことが嬉しいです。みなさんも聖に会えたことに感謝して『ありがとう』と言いましょう」とファンに促すような場面も。もっとグループを大きな場所に連れて行くと涙ながらに語る生田の姿はたくましく見えた。 　ダブルアンコールで譜久村は真っ白なドレス姿で登場。手紙を朗読し、「『降りといで！』あの日、信じられないくらい一番幸せだった女の子は今日も一番幸せです」と大抜擢の加入から卒業までの月日を振り返り、ホットピンクに染まった横浜アリーナを見渡した。そんな譜久村が1人で歌い始めるのは、「I WISH」だった。〈人生って すばらしい〉と27年の人生の中で12年をモーニング娘。として過ごしてきた彼女が歌う「I WISH」は特別なもので、これからも語り継がれるような歌唱になっていたと思う。そして、譜久村が最後にグループで歌ったのは「みかん」。グループ伝統の曲でメンバー全員が笑顔で楽しく卒業を迎えた、譜久村らしい卒業コンサートとなった。 　モーニング娘。に限らずハロー！プロジェクトではこれまでさまざまなタイプのリーダーがグループをまとめてきたが、譜久村は“声”でグループをまとめていたと言えるだろう。譜久村が加入してからの12年間でリリースされた楽曲の肝となるパートを多く担当しただけでなく、過去の楽曲も多くのパートが譜久村に託され、“譜久村聖の歌声”の存在こそがある種グループの個性として確立していった。そんな譜久村の歌声の存在の大きさをよく感じる公演となったが、それと同時にグループのファンの声の存在も大きかったように感じる。10年以上にわたって彼女たちの成長を見守るファンの存在、そしてその期待に長年応え続けるメンバーの気持ち、この両方がある限りモーニング娘。は末長く続いていくと感じた。