ゲーム制作で育む「論理的思考」 山鹿市の小学校、プログラミング学習4年目 「ニンテンドースイッチ」活用
山鹿市は、小学6年生のプログラミング学習に、家庭用ゲーム機「ニンテンドースイッチ」を活用している。オリジナルのゲームを制作し、論理的思考を育むのが目的。全国唯一の試みで、導入から4年目となる本年度は市内4校に広がっている。 5月中旬、今年から実施校になった、めのだけ小でプログラミング学習が始まった。児童一人一人にニンテンドースイッチが手渡され、プログラミングスクールの外部講師がゲームを制作するソフトの基本操作を説明。2回目以降は主に教師が担当し、6月のゲーム完成を目指す。男子児童(11)は「簡単に攻略されない難しいゲームを作りたい」と目を輝かせた。 任天堂(京都市)の協力を得て、山鹿市がゲーム機を使ったプログラミング学習を取り入れたのは2021年度。eスポーツなどを展開する市の「e─City YAMAGA プロジェクト」の一環で、ゲーム機90台を購入するところから始まった。 最初に手を挙げたのが鹿本小。当時の校長、中川英明・米野岳中校長は「ゲームをする側から作る側になることで、子どもたちの物事の捉え方が変わるきっかけになると確信した」と振り返る。
しかし、ゲームを授業に取り入れる前例のない挑戦。勉強への影響を心配する保護者や、新たな負担を強いられる教師から反発も予想されたが、むしろ前向きな反応が多かったという。 試行錯誤し、八千代座など山鹿の文化財などを盛り込んだゲームを制作した6年生。最後は5年生がそれらを手に取って、プレーを楽しんだ。「勉強は苦手でもゲームは得意な子が、周りに教えて生き生きとしている。そうした姿も頼もしかった」と中川校長。 事業開始から関わるNTT西日本イノベーション戦略室ソーシャルプロデューサーの中島賢一さん(52)=山鹿創生アドバイザー、福岡市在住=は「プログラミングで培われる能力は論理的思考」という。「ゲームを作ることで、物事の仕組みについて考える力が身に付く。そうした思考は一度学べば消えることはなく、タイミングは小さい時の方がいい」 鹿本小に続いて3年目から山鹿小でも始まり、本年度はめのだけ、三玉の2校も加わった。「将来的には市内の全小学校で実施したい」と市総合戦略課。
しかし、課題もある。現在は前期、後期に分けるなどして90台のゲーム機を使い回しているが、全校に1人1台ずつ配置すれば500台は必要となる。学校間で教え方にばらつきが生じないような配慮も求められ、これには教師向けの指導マニュアルを作成して対応した。 昨年度、山鹿小でゲーム作りを体験した山鹿中1年の男子生徒は「問題が生じた時、一つ一つ改良を加えていく過程が楽しかった」と達成感を口にした。こうした学びの成果は数字に表れにくいが、既に山鹿モデルに関心を寄せている自治体もあるという。中島さんは山鹿から始まった一歩が、全国に波及する姿を楽しみにしている。(本田清悟)