イラン大統領の葬儀、当局は「煽情的なレトリック」封印 国民の不満高まる中での大統領選へ
イラン北西部のタブリーズに21日、ライシ大統領を悼む数千人の市民が集まった。 同大統領は19日、アゼルバイジャンとの国境地帯を移動中にヘリが墜落して死亡。同乗していた外相と他7人も死亡した。 大統領らの遺体は現場に近い主要都市タブリーズに移送され、国営テレビは国旗に包まれた棺を乗せた車両の周りに大勢の市民が集まる様子を伝えた。市民らはライシ師やアブドラヒアン外相らの写真を掲げていた。 ただ大勢の参列者が集まったにもかかわらず、一部の関係者からは、過去に行われた高官の葬儀と比べると対照的だという声が上がっている。 政府は5日間の服喪期間を宣言した――だが、2020年にイラクで米国のミサイル攻撃により死亡した革命防衛隊のソレイマニ司令官の葬儀の際のような、煽情的な言葉はほとんど聞かれなかった。同司令官の葬儀に集まった人々は、悲しみと怒りの涙を流していた。 イランを支配する宗教界と一般社会との間で危機が深まる中、今回のヘリ墜落事故は起きた。主要な問題は、社会的・政治的統制の強化から、経済の苦境まで多岐にわたる。 こうした社会の雰囲気は、6月28日に急きょ行われることになった大統領選挙にとって不吉な兆候だ。 今年3月の議会選挙で投票率が約41%という歴史的低水準になったことに危機感を抱くイラン支配層としては、高投票率確保に向けて国民のムードを盛り上げたいところだ。だが、生活水準の低下と蔓延する汚職に対し国民の怒りは広がっており、大統領選の投票率も上がらない可能性がある。また2022年に若い女性が拘束された後に死亡したことへの抗議デモが、当局によって弾圧されたことへの不満もくすぶっている。 ライシ師の遺体は、タブリーズからテヘラン空港を経由してイスラム教シーア派の聖地コムへ向かった。その後テヘランのモスクに安置され、23日に埋葬のため故郷のマシャドへ移される予定だ。