「単独での復旧は難しい」 JR西が全線運休の美祢線に言及【山陽小野田】
大雨被害のため1年近く全線運休となっている美祢線について、JR西日本広島支社の広岡研二支社長は29日、山陽小野田市文化会館「不二輸送機ホール」で開かれたJR美祢線利用促進協議会(会長・篠田洋司美祢市長)の総会で「膨大な経費がかかるため、復旧や再開後の運行についてJR単独では難しい」との考えを初めて示した。併せて美祢線だけにとどまらないこの地域の公共交通の在り方、役割について協議する部会の設置を提案した。 総会では昨年10月に設置された復旧後の利用促進検討ワーキンググループの検討結果が報告された。現状分析では、ここ数年はとくに利用者の減少が目立ち、2022年の輸送密度(1㌔当たりの1日平均利用者数)は377人にまで落ち込んだ。減少率は沿線人口よりも高く、高校生らの通学利用の減少に加えてコロナ禍の影響が残っていると分析した。 利用促進については、これまで不十分だったターゲット設定について「通学」「観光」「まちづくり」と明確化し、それに向けての短期的、中長期的な対策を明示。主要駅から高校までのアクセス強化、観光列車の運行、駅周辺の再整備などを提案した。 こうした取り組みにより輸送密度が最小値で685人、対策効果が最も上がった場合は最大値で1292人に回復すると試算した。県は「考えられたアイデアを可能なものから取り組めるよう県としても支援する」と理解を示した。 ワーキンググループにはJRも参加しており、広岡支社長は「すべて取り組んでも1200人強という数字は大量輸送という鉄道の特性発揮というレベルには達していない」とし、従来と同様、鉄道に限らない公共交通の在り方を議論する部会の早期設置を求めた。 部会は国が仲介に入る再構築協議会ではなく、あくまで任意団体である協議会の中で持続可能な公共交通を探ることを目的とし、現在、代行バスが運行される中で「公共交通機関への住民ニーズが薄れないように1年以内に方針を出してもらいたい」と訴えた。 提案に対して篠田会長は「在り方と復旧は別のもの。線区に区切ってではなく、鉄道ネットワーク全体での観点で美祢線の今後を考えたい」とした。村岡嗣政知事は「鉄道での復旧を求めていく観点から部会設置を検討したい」とコメントした。 JR側の部会設置の提案は沿線3市が持ち帰り協議し、7月をめどに開催を調整中の臨時総会で結論を出す。 総会では今年度の事業計画などを決定。3カ月間しか運行できなかった美祢線全線開通100周年ラッピング電車を、鉄道ファンらの要望を受けて8月の1日間、厚狭駅に展示することなどを決めた。