安倍首相への批判の言葉「歴史修正主義」とは?
安倍首相の歴史認識について海外メディアの批判が相次いでいます。とくに目につくのは、多くの批判記事のなかで「歴史修正主義」という耳慣れない言葉が使われていることです。たとえば、米ニューヨーク・タイムズは「安倍氏の危険な歴史修正主義」と題する社説を掲載し、英フィナンシャル・タイムスも「歴史修正主義者」と指摘しました。米議会調査局が2月下旬に公表した日米関係に関する情勢分析の報告書にも、「安倍首相は(略)歴史修正主義者の視点を持っている」と書かれています。この言葉を使って安倍首相を批判する海外メディアが多いのです。 「歴史修正主義」とはいったいどういうものなのでしょうか。
確定した歴史的事実に「異議」唱える
歴史修正主義とは、すでに確定している“歴史的事実”について異議を唱え、存在しなかったかのように主張したり、修正を迫ったりすることです。歴史の「見直し=リビジョン」を提唱するため、こうした人たちは「リビジョニスト」とも呼ばれています。しかし、時代を経て新たな事実などがわかった場合、それまでの歴史がいろいろな角度から検証され、「修正」されるのは本来当然のこと。この歴史修正主義が否定的な意味で使われているのは、それこそ歴史的な経緯があるのです。 その大きな理由は、ナチス・ドイツによるホロコースト(大虐殺)の否定論者が自分たちのことを「歴史修正主義者」としたからです。かつてドイツが国家をあげて推進したユダヤ人への抑圧政策、とりわけアウシュビッツ強制収容所でのホロコーストは、人類史上最悪の惨劇といわれています。ところが、第2次世界大戦後、欧州では一部の人がホロコーストを疑問視するようになり、1970年代にはたくさんの否定論が登場しました。こうした人たちが「歴史修正主義者」と名乗ったため、欧州や米国でこの言葉が批判的な意味で使われるようになったのです。日本でも90年代以降、日本軍による南京事件がなかったなどとする人に対して使われるようになっています。