<まる見えリポート>厳罰化進む飲酒運転 根絶の気配見えず 自転車も罰則、29人摘発 三重
悲惨な事故につながる飲酒運転。先月1日に施行された改正道交法で自転車の酒気帯び運転が罰則対象になるなど、厳罰化が進む。飲酒運転が絡む人身事故は一時期と比べて減少したが、三重県内では今年、先月末までに昨年同期比1件増の31件の事故が発生。ここ数年は下げ止まっている。飲酒運転は事故を起こさなくても刑事罰や行政処分を受け、社会的な立場を失うことにもつながる重大な違反だが、根絶の気配は見えない。 県警によると、先月までに発生した飲酒運転による人身事故のうち、死亡事故は3件で、3人が死亡。年に100件以上の人身事故が発生していた平成20年ごろよりは減少したが、昨年までの5年間で、年平均35件の人身事故が起きている。 飲酒運転による摘発件数も横ばいが続く。県警は飲酒運転をしたり、車両を提供したりしたなどとして、先月までに367件を摘発。昨年までの5年間でも、年に300件―400件超を摘発している。 道交法では、酒に酔って正常に運転できない状態の「酒酔い運転」と、呼気1リットル当たり0・15ミリグラム以上のアルコールが含まれた状態の「酒気帯び運転」に刑事罰を定めている。 酒酔い運転では「5年以下の懲役または100万円以下の罰金」、酒気帯び運転では「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」に処せられ、同乗者、車両や酒類の提供者も罪に問われる。 自動車の飲酒運転では行政処分も受ける。今までに違反がない場合でも酒酔い運転では3年の運転免許取り消し処分。酒気帯び運転では、検出されたアルコール量によって約3カ月の免許停止または2年の取り消し処分となる。 免許停止や取り消し期間中の運転はもちろん無免許運転だ。飲酒運転で免許を取り消されたのに車を運転し、無免許運転をしたとして逮捕されるケースも後を絶たない。 飲酒運転は社会的な立場を失うことにもつながる。県は飲酒運転に関わった職員に対する懲戒処分の基準として「免職または停職」と明記。懲戒解雇を含めた罰則規定を設ける民間企業もある。 実際、鳥羽市消防本部は5月、酒気帯び運転で略式命令を受けた20代男性消防士に停職6月の懲戒処分、県警は8月、酒気帯び運転をしたとして、男性警部補(36)=当時=に停職1月の懲戒処分をそれぞれ下している。 自転車の飲酒運転も厳罰化が進む。先月1日施行の改正道交法で、自転車の酒気帯び運転が自動車と同等の刑事罰となり、県警は同月だけで29人を摘発した。運転免許の所有者は最大で約半年の免許停止処分を受ける可能性もある。 県は飲酒運転における懲戒処分の基準について「自動車に限定していない」と、自転車でも「免職または停職」が原則であると説明。ある民間企業も、違反があった場合は「自動車に準ずる処分」を検討しているという。 県警交通指導課の担当者は「飲酒運転は重大な事故につながる犯罪行為」と指摘。「事故を起こさなくても、仕事や家庭など、普段の生活を全て失うことにつながる。絶対にしないで」と呼びかけている。