原子力推進システム船、海運業界の2割超が支持
国際海運会議所(ICS)が発表した「マリタイムバロメーターリポート2023―2024」によると、最新のデータでは、海運業界のリーダーのうち約4分の1(23%)が原子力を将来の最も実現可能な燃料技術として挙げていることが分かった。過去、二つの調査期間(2021―22年、22―23年)では、原子力エネルギーが最も有望なクリーンエネルギー解決策であると考える回答者は10%未満だったが、急速に増加していることを示している。 ICSは海運業界の主要な国際貿易団体の一つ。全ての部門や取引での船主や運航者を代表している。ICSの会員は、アジア、欧州、米国の各国船主協会で構成されており、これらの会員企業は世界の商船総トン数の80%以上を運航している。 今回のリポートは海運業界からC―suite(最高経営責任者レベル)のグローバルな意思決定者が参加し、そのうち約30%が船主、26%が船舶管理者だった。C―suiteとは、CEO(最高経営責任者)、CFO(最高財務責任者)、COO(最高執行責任者)、CIO(最高情報責任者)など、「C」から始まる会社の経営を担当する役職者を表す。 これらの意思決定者は、業務運営に影響を与える課題をどのように捉え、それに対処する自信についての見解を提供している。 ICSリポートによると、この3年間にわたって行われた調査では、100人以上の世界の海運業界リーダーが重要な課題に対する意見を持っていることが分かった。 同リポートは、エネルギーの安全保障への懸念や石油価格の変動が、燃料補給の頻度が少ない船舶、特に原子力で動く船舶の魅力を高めていると指摘する。 しかし同時に、必要な技術はまだ開発途上にあり、社会的な受け入れも課題で、海運業に特化した規制の更新が必要になるという認識も示した。 原子力推進システムのビジネスを進めている英国拠点のコアパワーは、このトレンドを歓迎している。同社は今回のICSリポートの結果について、「原子力はより高速な航行、小型の船隊、そして貨物スペースの増加を通じて、海運業を革命的に変える可能性がある」と説明した。 同リポートはまた、地政学的な不安定性の急増、物理的およびサイバー攻撃の脅威の増加を指摘。 世界的、地域的な規制環境の変化、脱炭素化を推進するための燃料とインフラの不足など、重要な懸念事項を強調する。 こうした課題の中で、代替燃料への関心の高まりという広範なトレンドが浮き彫りになった結果、原子力推進システムへの支持も増えたものとみられる。
日本海事新聞社