為替ヘッジ付き米国債利回り、2022年以来のプラス転換-FRB利下げ
(ブルームバーグ): 米連準備制度理事会(FRB)の利下げにより、国内投資家の為替ヘッジ付き米国債の利回りが2年超ぶりにプラスに転じた。
ヘッジ付き米10年国債利回りは最近、2022年9月以降で初めてプラスに転じ、一時0.28%まで上昇した。ヘッジコストは主に2カ国間の短期金利差によって決まる。FRBが金融緩和にかじを切る一方、日本銀行は金利を引き上げており、ヘッジコストは23年10月に付けたピークから約170ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下している。
ニッセイアセットマネジメント戦略運用部の三浦英一郎専門部長は、利回りのプラス転換は米国債の魅力が上がるという点でポジティブだと話す。投資家の需要を喚起するには「まだ物足りない」としながらも、来年度の投資計画を考える上で、今までよりは触手を伸ばしやすくなるとの見方を示した。
ヘッジ付きの米国債利回りは、1%台で推移する日本の10年物国債利回りの4分の1程度にとどまる。それでも国内投資家はドル・円相場に対する見方に応じてヘッジを調整し、米債への投資を続けている。
ブルームバーグがまとめた財務省の統計によると、昨年1-10月に過去最高の20兆円に達した米債の買越額は、今年も同期間に15兆1000億円と高水準を維持している。
三井住友信託銀行の瀬良礼子マーケット・ストラテジストは、国内勢の米債投資は為替差益を狙った面もあるとみている。米国債の利回りが4%を超える中、為替が円高に振れてドルの押し目買いをする機会が訪れた際、債券のキャピタルゲインと為替取引の両方から利益を得ようとするのは「理屈に合っている」と話した。
日銀による2度の利上げにもかかわらず、円は1月から10月にかけてドルに対して約7%下落。昨年の同期間は約14%下落していた。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券の鶴田啓介シニア債券ストラテジストは、「日銀の利上げはゆっくり」だとし、今後は日本要因での「ヘッジコスト低下はあまり期待できない」と述べた。