〝恋人のカラー〟でブランド化 JAきみつ(千葉)が進める地域ぐるみの販売戦略
千葉県君津市はカラーの生産量日本一。同市小糸地域のJAきみつ君津市小糸花卉(かき)園芸組合では、地名の「小糸」とカラーの花言葉「華麗なる美」「乙女のしとやかさ」を連想させる「恋人」とかけて、「恋人(こいと)のカラー」ブランドとして出荷する。地域ぐるみでブランド化を進め、ブライダル需要も取り込み、販路を拡大する。 カラーは、すらっとした姿が美しく、ウエディングドレス姿の花嫁を映し出しているようなイメージでブライダルの需要も高い。 代表的な産地の一つである小糸地域は、1953年ごろから生産が始まり、60年には現在の生産組織であるJAきみつ君津市小糸花卉(かき)園芸組合の前身、花卉生産組合が設立された。85年ごろには、東京市場のシェア70%を超えるようになった。 いつの時代もカラー栽培に欠かせないのが豊かな湧き水だ。ほとんどの組合員が井戸の水を使用。年間を通じて水温が15度ほどと安定しており、冬は暖房の役割を果たす。 カラー生産者で同組合組合長の杉谷善久さん(58)は「ハウスを暖める燃料を使うことなく、自然の恩恵を受けながら、環境に優しい栽培ができている」とほほ笑んだ。 現在の同組合のカラー部は35人。「アクアホワイト」「ウエディングマーチ」などの品種を栽培。10月から翌年の5月まで出荷され、最盛期は3、4月だ。 2021年に、従来の品種よりも収穫時期が早く、茎が細い「ブリリアント・ベル」が20年ぶりに新品種として登場した。フラワーアレンジメントやブーケなど新たな用途も期待でき、販路を広げている。 カラー栽培を次世代につなげようとJAでは、新規就農者が栽培を実践して学ぶ研修施設「カラーの里」を19年に新設。生産組織と協力し、新たな担い手づくりに努めている。 一方、生産者の高齢化などの影響で、農家は減っており、担い手の確保が課題となっている。8年前に東京から移住してカラー栽培を始めた奈良洋さん(56)は「君津を訪れ、カラーの魅力を知った。地域の農家やJAの協力を得て栽培を始めることができた」と話す。 杉谷組合長は「新型コロナが5類に分類され、行事の開催も通常に戻りつつある。組合員が生産したカラーが多くの消費者に届くように、JA、行政、関係機関と連携し、小糸のカラーを積極的にPRしたい」と意気込んでいる。
日本農業新聞